深夜、ケラコーナで一人寂しくれんごくちょう狩りに勤しんでいたところ、とあるフレンドからチャットが飛んできた。
「やっほ(^^)/」
ワンダーフォーゲル部の方でしょうか?
「やっほー(山彦)」とでも返せば、このフレンドは喜んでくれるのでしょうか?
ここは山じゃない。
草木が鬱蒼としたケラコーナ原生林だ。
れんごくちょうをはじめとし、ブルサベージやベルフェゴルといった強敵が埋めく死地であって、百戦錬磨の私とて一瞬の油断が命取りになる場所なのだ。
そこへ「(^^)/」←こんな顔文字付きで腑抜けたチャットが飛んできてややイラついた私ではあったが、ここは大人の対応で元気よくあいさつを返した。
「こんばんみ!」
もう何百回と繰り返したお決まりのあいさつ。
ダッソンさんと言えば「こんばんみ!」と言うほど馴染のあるあいさつではあるものの、一向に誰も真似してくれないことに少々寂しさを感じているが今は関係の無い話なので割愛させていただく。
ところが…。
『送信エラー』
なん…だと…!?
あいさつ後、即ログアウトしたというのか…!?
ふざけてるにもほどがある。
あいさつに対してあいさつで返すのは人として当然の礼儀であり、それを踏みにじるような行為を平気でするやつは人にあって人に非ず。
怒髪天を衝く勢いでチャットを返すも、何回打っても何回打っても「送信エラー」の文字しか表示されず、行き場のない怒りをベストスマイルに代えてれんごくちょうの討伐を続けた。
おかげで経験値ががっぽりだ。
そんな怒りも数分経てばどこへやら。
ダッソンさんは鉄のような男の為、怒りが収まるのもとても早いのです。
別のナニかもとっても早いのですが、これまた今の話とは関係ないので割愛させていただきます。
それにしてもれんごくちょうに交じるヘルシーサーが邪魔で邪魔で、ずっとヘルシーサーのことを考えていたら頭の中でヘルシーサーという言葉が形骸化し始め、気が付いたら「ヘルシーさ~」と沖縄人ばりに意味の分からないことを口走っていた。
いや、別にこれが言いたかったわけじゃない。
本当なんだ、どうか信じてほしい。
なんだか言い訳じ…―――
ポンっ。
チャットが飛んできた。
「あれ?もしかして離席中?」
つづく