先日、魔法の迷宮に行った時の話。
その日は既に時間も遅く、フレンドやチーメンは迷宮へ行ってしまった後だったと記憶している。
つまりボッチ。
誘うあてのない私に出来ることは、一人で迷宮にチャレンジすることだと分かっていたが、如何せんスティック振りオンリーのスパスタで野良に飛び込む勇気は持ち合わせていない。
迷惑にしかならないのは日の目を見るより明らかであり、つまり転職を余儀なくされている状況である。
しかしながら、とっととスパスタのレベル上げも終えてしまいたい私にとって、転職することは方針がブレてしまう為、無意味となってしまう。
むむむ、と3秒ほど悩むも、気づけば迷宮への鍵を使っていた私。
意外と毛の生えた心臓を持っていたようだ。
マッチングしたのは、斧戦士のハルさんと爪のしっぴたんさん。
残りの一人はサポ僧侶。
まぁ、悪くはない。
スティックスパで来ておきながら、何が「まぁ、悪くない」だ。
お前が言うな、そう聞こえた気がしたが幻聴に違いない。
ベストスマイルを振りまきつつ、海神の大霊洞を進んでいく一行。
その足取りは軽く、サクッとふくびき3枚貰って帰路に着こう、そんな事を考えていた矢先だった。
異変が起きた。
3Fでの出来事だった。
ガニラス3匹を相手に大立ち回りを演じていたところ、気が付いたらサポの僧侶が死んだ。
え?っと思うも、間もなく戦士ハルさんも続けて他界。
慌てたしっぴたんさんは爪から素手盾に装備を変え完全会心ガードからのばくれつを放つも、身の守りを固めた代償として火力が落ちてしまった為、蟹の殲滅に手を焼いていた。
そんな中、私もいつまでもスマイルしながらスティックでペシペシしてるわけにもいかず、慌ててバギクロスの詠唱を繰り返した。
なんとかこの場を勝利で飾るも、見るも無残な光景がそこには広がっていた。
唯一のザオ役の僧侶は死に、戦士ハルさんも復活することが出来ない。
残された二人に出来ることは、残る敵シンボル2つを何とか倒して扉まで辿り着くことしかなかった。
頑張ろう、そう口に出して進むも現実はあまりにも無常で無情だった。
ガニラス、再び。
にっくき青い蟹。
茹でたら真っ赤になってさぞかし美味しそうになるんだろうなぁ、などと考えている余裕はなかった。
この状況、どう切り抜けるべきなのか。
しっぴたんさんの装備を爪に変えてもらったところで焼け石に水だし、そもそも全滅へのリスクが高まるだけである。
私もバギクロスを放つことくらいしかできないが、そればかりやっていたら回復が追い付かない。
ベホイミで傷を癒してくれる僧侶はすでに半透明になっている為、私がアタッカー兼ヒーラーとして動くほかない。
正直、長期戦は覚悟の上だが、果たして生還出来るのかどうかすら怪しい。
サクッと諦めてリタイアするという選択肢も無くはない。
が、それを口にする者はここにはいなかった。
やるしかない、そう決心した私の頭の中に声が響いた。
つづく
※写真は本文とは関係ありません。