━━━グランゼドーラ城。
ア「ねぇ、盟友アンダーソン?」
ア「普段俺から話しかけない限り絶対に喋ろうとしない君から話しかけてくるなんて珍しいこともあるもんだね、勇者アンルシア?」
ア「そんなことより聞いてほしいことがあるの」
ア「なんだい?」
ア「ねぇ盟友アンダーソン、あなた、今何月か知ってるかしら?」
ア「いくら無職の俺でも一応まだ月の区別くらいはつくよ。曜日は危ういけどね」
ア「いいから早く答えて」
ア「なんだい薮から棒に…。12月だろ?」
ア「そう、12月なのよ!」
ア「?」
ア「寒いわ」
ア「よく似合ってるよ」
ア「そうじゃなくて寒いのよ?」
ア「おかしいな、女子は身なりを褒めると喜ぶはずなんだけど…」
ア「時と場合によるわよ」
ア「お姫様ってやつは、こうも我儘なのかねぇ」
ア「私の意志で自由に着替えが出来ればいいけど、どうしてもあなたの承認が必要なのよ」
ア「勇者と盟友の関係について今一度考えたくなってきたよ」
ア「いいから新しい服をお願いするわ」
ア「君ってやつは本当にお姫様なんだなぁ、仕方ない」
ア「どうだい、勇者アンルシア?気に入ってくれるといいな」
ア「確かにさっきの水着よりは暖かいけれども、どうしてこうなってしまうのかしら?」
ア「と言うと?」
ア「この衣装、あなたの趣味全開じゃない」
ア「勇者アンルシア、一応言っておくけどそれは俺の趣味じゃないんだよ?」
ア「じゃあ誰の趣味だって言うの?」
ア「よーすぴとかリッキーとかでしょ」
ア「誰なの、それ…?」
ア「運営さ」
ア「運営…?」
ア「難しいことはルシェンダ様に聞くといいよ」
ア「そうね、そうするわ」
ア「満足したかい?」
ア「満足には程遠いけど、ここで文句を言ってまた水着に戻されるよりはマシだわ」
ア「俺としては衣装そのものよりも、それに伴って変わる髪型のほうが重要なんだけどね」
ア「何が言いたいの?」
ア「出来ればデコは常に隠してほしいんだ」
ア「そういうことはもっとオブラートに包んだほうがいいわよ?」
ア「希望を素直に伝えただけさ」
ア「あなた、だからモテないのよ」
ア「やめて」