ハヤミンはゴシックニーソをひたすら打っていた。
町中でゴシックニーソをはくプレイヤーを見るたびに
達成感と満足感で満たされていた。
アストルティアに降り立ったハヤミンは、バラ色のアストルティアライフを夢見て様々な職人を見て回った。ただ一つ、そのギルドに行くのがとても苦労したのが防具職人だった。
平原を超え、山を越え、バアラックから逃げ、ドルボードも無く、ひたすら続く砂漠を超えた先にあるギルドは、まさに砂漠の中のオアシス。職人になることがスタートであるはずが、むしろそこはゴールだった。
薄暗く、誰もいないギルドではあったが、ハヤミンは防具職人になった。
当時、作るものなど銀のはちがねか、あみごて。
時が経つにつれ、裁縫職人は奇術や水の羽衣、無法者を作っており、町を歩く人はみな、華やかな裁縫装備を身にまとっていた。
防具職人は誰が買うのかわからないプラチナやくろがねを作っていた。
そんななか、とても華やかな防具が登場した。
ゴシック装備である。
ハヤミンはゴシックニーソをひたすら打っていた。
町中でゴシックニーソをはくプレイヤーを見るたびに
達成感と満足感で満たされていた。
ある日、チームメンバーのエル子ちゃんからゴシックニーソを作ってほしいという依頼を受けた。
快く引き受けた。
しかし、いざハンマーを持った途端に、何とも言えない感覚に襲われる。
この押し寄せてくる胸の高鳴り、高揚感、そして陰から覗いてくる罪悪感。
この正体はなんなのか。
「なぜ、君はエル子の靴下を作っているのか」
ハヤミンが問いてくる。
「なぜ、君はニーソを作っているのか?」
た、頼まれたからだ・・・。
「なぜ、ひたすらニーソをつくっているのだ」
「いままで達成感と満足感で満たされていたものは、何が要因だ」
ちがう。ちがう。
「なぜ、君が作った靴下なのに、君が靴下に嫉妬しているのだ?」
いや、ちがう、そんなことはない!
「きみは靴下になりたかった。その願望を投影させているのではないか?」
振り上げたハンマーがおろせない。
テレビに映ったゲージを定規で測ろうとも、涙で定規の目盛りが読めない。
赤白黄色でつながれたテレビをHDMIでつなげれば、測りやすいのかなと思ったこともあったが、今HDMIにしても、この状態では正確に測ることはたやすいことではなかっただろう
☆1ができた。
それ以降、ハヤミンがハンマーをもつことはなかった。
バラ色のアストルティアライフを夢見て防具職人になったはずが、なぜ薄暗く誰もいないギルドで靴下を作ることになったのか。もしあのとき。裁縫ギルドになっていれば、華やかな職人ライフを送ることになったかもしれないのではないか。ギルドを一歩でれば青空が見え、ギルド内には人がたくさんいる。そんな裁縫ギルドに。