人に優しい人は素晴らしいことだと思う。ましてや知らない人に親切なことが出来るなんて尚更すごいことだと思う。これは私が1年目卵時代のお話。
___________冥王の心臓_____________
ナスエル『お困りですか!!!』
マリ『お、おぉっ...まぁ、うん』
ネルゲル戦目前の私達の前に現れたのはナスビナーラの着ぐるみを着たエル娘だった。遠くから走ってきて急に話しかけられてしかも茄子だったものだからつい驚いてしまう。
ナスエル『私がお手伝いしましょう!』
彼女はどうやら私達を助けてくれるようだ。彼女のレベルもステータスも特に私と変わらない初心者ではあるが、占い師だったので力になるだろうな。一緒に来ていた相棒にも許可を貰い、3人でネルゲルを倒すことに。
マリ『やいやいネルゲルさんよぉ!ボコボコにしてやr』
ナスエル『ぁ、回復いない...』
マリ『はい?』
現在のパーティ構成 魔使(私)バト(相)、占い(茄)というまさかの3人パーティ。原因は『よしいくぞいくぞ!』という勢いでナスエルを仲間に入れた瞬間に扉を開いたせいである。
マリ『うぉいっいぃ、誰か気づくだろ!』
相『3人縛りでやるのかと思ったので何も言いませんでした…』
マリ『誰がこんな初心者レベルで縛りプレイするんだよ!』
ナスエル『餅つこう、僕が回復やふ』
という、落ち着いてない私達を落ち着いてない言動で落ち着かせるナスエル。そうか、占い師も回復は出来るのか。そこで初めて知った。
マリ『よし、頼んだぞ!』
ナスエル『任せて!』
ナスエルは傷ついた体を回復させ、死んだ時には蘇生までしてくれた。今になって、占い師はカードが運任せなところがあるから初心者の彼女に回復を任せたのは負担をかけてしまったと思う。
そして私達はなんとかネルゲルに勝利した。
_____________グレン城下町____________
マリ『ありがとナスエル~、助かった』
ナスエル『いえいえ~』
私達はナスエルにお礼を言った。3人だけというトラブルはあったものの勝ったので結果オーライ。回復の彼女がいなかったら勝てなかっただろうな。
相『でも、なんで助けてくれたんですか?』
ナスエル『ん~...』
ナスエルはグレン城下町にいる人に自分の踊りを見せながら考える。茄子の格好なのでそれがどうも面白く、可愛らしかった。
ナスエル『道行く人を救いたいんですよねぇ~』
それはナスエルの本心で、私達と別れた後も、彼女はグレン城下町で困っていた初心者に声をかけて助けていた。
マリ『良い人だったな~』
相『ですね』
彼女の冒険は人々を救うために行くんだろう。私はそんな人を、勇者だと思った。
____________数ヶ月後____________
ナスエルが久しぶりにログインして、話しかけようか迷っている私がいた。きっと彼女のことだ、また人助けをするんだろう。邪魔しちゃいけないかな、なんて思い、私はその日声をかけなかった。
数日後、彼女のかきおきに悲しいことが書かれていた。
『鬱病になったのでやめます』
鬱病になりやすい人に『まじめで責任感が強い人』、『他人に優しい人』、『周囲の評価が高い人』が取り上げられている。私は彼女ともっと話をしてあげれば良かったと後悔している。きっと彼女はたくさんの人を助けたし、たくさんの人に優しくしただろう。でも、彼女自身に寄り添う人はいたのか、私も彼女みたいに少し手を差し伸べたら助けてあげることだって出来たんじゃないかと考えてしまう。
私は何年も経った今でもナスエルとフレンドでいる。彼女が帰ってきたとき、今度は私が大魔王や邪神でもなんでも倒して、道行く人を救う勇者を助けてあげられるように。