「トーーーン!」
コルット地方の海近く、でっかいかごを背負ったトンがいた。
「生・・・生きてた。よかったぁ。ヤシの実背負って行き倒れてるって聞いて・・・・」
「えへへ。ちょっとデスルーラしすぎちゃって。でももうルーラストーン使えるから大丈夫♪」
装備がだいぶ痛んでいる感じだったけど、表情は元気そうだった。
「見て見て~♪だいぶ採れたよ。」
うれしそうにしおかぜ草とさざなみのしずくを見せてくるトン。
アタシは申し訳なくて、小さな声であやまった。
「ごめん・・・。しおかぜ草とさざなみのしずく・・・見つかりにくいって本に書いてあったのに言わなくて・・・・。」
「やっぱりそーなんだ!レーンの村の人が教えてくれたんだ~。海の神様の気まぐれらしーよ♪」
そんなわけないだろー、寄せる波と返す波がある一定の条件で交わったとき・・・と、言いかけてやめた。
アタシはさざなみのしずくを見つけたことがない。
本で得た知識をいくら語っても、実際に拾い集めたトンにはかなわない気がした。
「そうそう!レーンの村の建物すごくステキだったよ!ランが気に入ったのわかる!」
「あ・・・うん。でしょ!このあたりの伝統的な建物らしく・・・・」
・・・・・。
ホンモノを見もしないで、大切な自分の家をウェディ風に・・・なんて言ってた自分に気がついて、言葉が続かなくなった。
「しおかぜ草とさざなみのしずく、まだ足りないんでしょ。アタシも探すよ。」
「うん!」
そう言うのがせいいっぱいだった。