住宅村の中にたたずむ、和の雰囲気漂う木工店。
一足足を踏み入れると、全身をやさしい木の香りが包んだ。
「ちょっと待っててね」
「はい」
いろりのそばでお茶をいただきながら、プロの仕事を見守る。
木を削る音が響いたと思ったら、あっという間に七夕のおうぎが出来上がった。
「うーん、最高傑作とまでいかなかったか」
渡された七夕のおうぎは、儀式用にはもったいないくらいのできのよさを誇っていた。
「じゅ・・じゅーぶんですっ」
店内には、最近の売れ筋という日輪の棍が並んでいた。
使う人、はたまた錬金術師を選びそうな一級品。
いつか、こんな品を手にしてみたい・・・
分不相応なのは分かっているけど、棍の輝きに願わずにはいられなかった。
「ランさんは、武器何使うの?」
「おうぎです」
「いっちょ作りますか」
「!!!」
七夕のおうぎのときとはうって変わって、たーらこさんの目つきが少し真剣になる。
どきどきしながら見守る中、木工刀は木材から、これ以上無いできのよさの太陽のおうぎを削り出した。
「こ、これいただいちゃっていいんですか?」
「まだ装備できないと思うけど、そのうち使って」
「は、はいっ!ありがとうございます!」
「あ、ついでに錬金しとく?」
いつの間に現れたのか、ツボ錬金のエプロンをしたドワーフが、出来上がった太陽のおうぎを渡してくれんと手をひらひらする。
「おお!おかかえのツボ錬金術師さんがいらっしゃるとは」
太陽のおうぎを渡すと、ドワーフのツボ錬金術師さんは鮮やかな手つきでツボをまわし出した。
「・・・・・なんで、こんな錬金できるんですか」
「大成功しちまったぜー♪」
渡された太陽のおうぎは、3回のツボ錬金で攻撃力がさらに上乗せされて、奇跡の輝きを放っていた。
「いつかこれ使いこなせるように、精進します!」
「あ・・あの、盾の錬金もお願いしていいですか?」
そうびぶくろからおずおずと白い盾を取り出す。
トンがまぐれで作ったホワイトバックラーの大成功品。
売っぱらおうかと思ったけど、そのままになっていた。
「おっけー!ちゃっちゃとやっちゃいましょー」
軽快にツボをまわす姿に、思わずおうえんしてしまう。
こちらもブレス系ダメージ減の効果が大成功して、ハイタッチ!
「ホントにありがとうございました!」
「いえいえ、儀式がんばってね」
お店から出ると、そうびぶくろをもう一度開けた。
ふくろの隅で、太陽のおうぎが輝いている。
今のアタシには分不相応だけど、これを装備できるようにがんばりたい!
そしていつか・・・どっさりゴールドの入ったふくろを持って、この木工店に通えるような冒険者になりたいな。
そうびぶくろをしまって振り向くと、屋根の向こうで夕日が真っ赤に燃えていた。