その、雑木林は祖父母の田舎の少し外れにあった。
小学校へ上がる前、お盆の帰省などのとき、よくそこで遊んだ。
ある時、遊びすぎて日も落ち切り、夕焼けも薄暗くなった時、そいつは現れた。
無駄に大げさな動き、アンバランスで、ぎこちなく歩く謎の人物。
転びそうになるくらい上体を揺らしながらも浮いてるように移動する、どこか体のバランスのおかしな男。
わたしは怖くなり、家に逃げ帰り数日熱を出して寝込んでしまった。
それ以来、雑木林では遊ばなくなったが、大人になって久しぶりに雑木林を訪れてみて、その小ささに驚いた。田舎の少し大きな家の敷地くらいの大きさしかなかったのだ。怪人が隠れ住むところなどあろうはずもない。事実、人に聞いてもそのような怪人の話は知らないという。ならば無限に広く感じたあの林は、夕焼けを背にはるか遠くに見たあの怪人はなんだったのだろう。
謎は解けぬまま、今はその雑木林も宅地化し、当時の面影はどこにもない。
だがわたしは今でも夕焼けの妙に赤い日にはあの怪人を目の隅で探すのだ。雑木林を追われた怪人が、今度はわたしを追ってやってくる。確信にも似た思いがわたしを不安に駆り立てるから…。
なお、この話はフィクションであり、実在の人物、団体、事件には全く関係がありません。