「なぜ・・・こんなことに」
グランゼドーラ王国の南、ドラクロン山地のとある場所に人影が一つ。
いや、人と呼ぶには些か不自然な姿をしていた。
角はあるがオーガにしては生白く、羽はあるがエルフと違いコウモリの様な翼であった。
むろんウェディ・ドワーフ・プクリポとも違う、それは[ガーゴイル]と呼ばれるモンスターである。
そんなモンスターが一匹で立ち尽くしていた、目の前に真っ二つに裂け黒焦げになった巨木が横たわっている。
話は少し遡る。
[大魔王マデサゴーラ]
魔族の王にして創生の女神への挑戦者、生きとし生ける者全てを自らの芸術の大成のための道具とみなし地上を偽りの世界で塗りつぶし遂に創生の霊核が眠る奈落の門へたどり着いた。
対するはグランゼドーラ王国王女にして当代勇者アンルシア姫。
導きの盟友と共に大魔王へと立ち向かうのであった。
その戦いは熾烈を極め大魔王は創生の霊核のちからで神へと昇華し、勇者姫並びに盟友を大いに苦しめた。
両者の呪文は激突し周囲に甚大な被害をもたらす。
後に明らかになるのだが、奈落の門はその名に反してレンダーシア上空に存在する・・・・・
結論から言えばその影響は落雷という形で巨木に影響を及ぼした、不幸にも巨木に住み着いていたモンスターが住処を失うこととなった。
「小生これからどうすれば・・・」
ここで彼を紹介せねばなるまい。
彼の名は[ガ・ゴイール]通常のガーゴイルよりヒョロリとしており通常種には無いクルリとした巻き毛が偉そうな毛髪が生えている。
またやや猫背で目はモンスター特有の鋭さが無い。
よれたコートと肩から下げた大きな鞄、どうにも珍妙なガーゴイルであった。
なお47歳独身である。
「まぁ怪我がなくて幸いであるな、それに元々引っ越そうかと考えていたのである!」
むろん強がりだ。
「贅沢は言わぬが3LDKで駅から徒歩10分近くに画材屋なんかあれば言うことなしであるな」
住処を失ったショックが大きすぎて逆に大きく出るゴイール、小心者程こういう時は大きくなるものである。
「っひゅ~、こんなところにガーゴイル?がいるぜ」
「ッハ、だれであるか?!」
声に驚き振り返るとそこには崖を這い上がってきた四人のモヒカン漢たちがいた、肩にトゲトゲの肩当をつけご丁寧に四人は赤・青・黄・緑の分かりやすい髪色をしていた。
「おいあのガーゴイル髪の毛があるぞ?」
「ズラじゃないのか?」
「はっはー、妙な頭してやがるな」
モヒカンに言われたくはない。
「ふーむ、こりゃ転生モンスターかもしれねーな」
「小生は普通のガーゴイルである!」
んなわけがない。
「俺たちゃ泣く子も黙るモンスター狩りを生業とするチーム[天駆ける星の輝き団]よ!」
似合わないにも程があった。
「さっきのデカい落雷の様子を見に来たら妙なモンスターが要るじゃねーか」
思わずあたりを見渡すゴイール。
「お前だお前」
「な?!・・・何か用であるか?」
「俺たちは大量発生したモンスターや狂暴化したヤツを狩ってまわってるんだが」
意外にもまともな活動内容だった。
「ほほう、それは立派な仕事であるな・・・では小生はこれで・・・」
しかしゴイールは回り込まれた(ダダダ)
雑魚っぽい見た目に反して連携のとれた動きでゴイールを囲むモヒカン達。
「しょ・小生は狂暴なモンスターじゃないのである?!」
「ッチッチッチ、そいつを決めるのはお前じゃない・・・・俺たちよ」
「ヒャッハー!知らなかったのか?モヒカンからは逃げられないんだぜ」
驚愕の事実。
ジリジリと包囲を狭めるモヒカン達。
「ひ・ひぇ~お助けを~」
情けない声を上げるゴイール、しかし。
「おさらば!」
「「「「っあ?!」」」」
上空へ舞い上がるゴイールにモヒカン達が慌てる。
「しまった!飛びやがった」
「そらガーゴイルは飛ぶだろう!」
「逃がすな!」
ヨタヨタと滑空で麓に逃げるゴイールをモヒカン達は追うのであった。
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