ドラクロン山地から滑空しロヴォス高地へ降りてきたゴイールはしつこいモヒカン達にまだ追い回されていた。
「ッヒーッヒー、しつこいモヒカンであるな。もう羽が痛くて飛べそうもないのである」
「おい、居たか?」
「こっちにゃ居ねーぞ」
「ヒャッハー!モンスターは消毒だー!」
「アストルティアの平和は俺たちが守ってやるぜ!」
そう遠くない位置でモヒカン達の声が聞こえてきた。
「ッハウ、こ・・・これはマズイのであーる。ど・どこか隠れる場所は?!」
しかし慌てて逃げて来たゴイールはロヴォス高地の開けた場所に迷い込んでいた。
「最悪荷物を捨てるか・・・・トホホ、苦労して貯えたんであるがなぁ」
肩から下げた鞄を見つめため息をつくゴイール、鞄の中には絵の具の材料にもなる宝石が少なからず入っていた。
「おい、そっちで声がしなかったか!?」
意外と近くでモヒカンの声が聞こえた。
(っひ、ど・・・どこかに隠れなければ)
ゴイールはつり橋のかかった岩柱の影に滑り込む様に身を潜めようとしたが・・・・
「ッキャ」
「っはう」
足元の何者かにつまずいてしまった。
「あたたたた・・・っは?!大丈夫であるか?」
状況もわきまえずお人好しのゴイールは思わず相手に声をかけてしまったのだった。
「うん、大丈夫大して痛くなかったよ・・・・・あら?」
それはとても小さな生き物であった、アストルティアの6種族のうちの1つ花の民プクリポと呼ばれる種族である。
「あなた?モンスター?」
ゴイールを見て首をかしげるプクリポ。
「しまったのである!?」
自分の置かれている状況を思い出し右往左往するゴイール。
「おい、そっちで声がしたぞ」
「近いぞ探せ!」
岩柱の反対側からモヒカン達の声が聞こえる。
(もはやこれまでか・・・!?)
ゴイールが観念していると。
「こっち」
「っへ?」
プクリポはゴイールに風呂敷をかぶせ岩のくぼみに押し込んだ
ッゴン!
盛大に頭をぶつけるゴイール、声を殺し必死に耐えた彼は評価されるべきである。
っと、そこへ。
「ここか!ん?」
「あら、こんにちは」
現れるモヒカン四人、辺りを見渡てしからプクリポに目をやる。
「お嬢ちゃん、この辺に髪の生えた妙な格好のガーゴイルが来なかったか?」
「髪の生えたガーゴイル?ごめんね、私食材集めるのにずっとうつむいてたから気づかなかったわ」
「っち、逃げられたか」
「どうする?」
「対して強そうでもないしほっといても危険はなさそうだが?」
「だな、逃げたんで本能的に追っちまったが」
腕を組みガヤガヤと話し始めるモヒカン達。
「しゃーねー他を当たるか」
文句を言いつつ帰り始めたモヒカン達、その後姿を見つめるプクリポ。
するとモヒカン赤が振り返りプクリポに話しかけてきた。
「嬢ちゃん一人か?」
「ええ」
「ふむ、まぁ嬢ちゃん相当な使い手みたいだな。もし髪の生えたガーゴイルを見かけたら悪さをしないように言っておいてくれ」
「ええ、見かけたら伝えておくね。モヒカンの人達が忠告してたよって」
「ッフ、んじゃな」
そう言って立ち去るモヒカン達、彼らの姿が見えなくなるまでプクリポは見送っていた。
「もう大丈夫かな?」
そうゴイールに話しかける・・・・・・が。
「あれ??あれれ??」
風呂敷をとってみると・・・・・・・・・・・・気絶していた、打ち所が悪かったようだ。
「きゃー!?大変!!ちょ?!どうしよう?!?!」
大慌てでゴイールを揺さぶるプクリポ、しかしゴイールは完全に目を回していた。
これは一匹の絵を描くことが好きなモンスターのお話、周りに理解されず一人っきりで過ごす寂しい日々・・・しかし。
このプクリポとの出会いが色を欠いたガ・ゴイールの生活にこれまでにない鮮やかな日常をもたらすとはゴイールもプクリポも誰も知らないのであった。
なお、頭を強く打った人を激しく揺するのはよくないので良い子の皆は真似しないようにね。
つづく!かもしれない・・・・・