「その耳はアストルティア6大陸にあまねく存在し、その腕は大国をもかき乱す」
そんな風に称される組織があることはご存じだろうか。
曰く、「街ですれ違った10人のうち、6人はその組織の構成員である」
とにかく、数が多い。ありとあらゆる市政業界、果ては魔王軍に通じる裏組織にまで構成員が存在する。
仮にエルドナのレンジャーが、その組織を犯罪者の集団と断定し、全員を検挙しようと試みても、レンジャー全員の人生が終わったって半分も捕まり終わらない。
曰く、「その組織は世界の全てを知っている」
組織の存在意義とは、この世のありとあらゆる「情報」を集めることである。
明日の天候、誰かの誕生記録、誰かの初恋のお相手、誰かの仕事の愚痴、犯罪者のアジト、魔物の動き、魔王の動き、大国の国家予算、小国と大国の衝突の兆し、etc…
組織を束ねる総裁の手元には、世間で起こる大小さまざまな事柄・事件の情報が集まる。どんなに些末であろうとどんなに大ごとであろうと、ありとあらゆる世界の情報が一手に集う。
組織は、この情報を元手に、世界中の「客」、つまり、あらゆる個人や機関に交渉を仕掛けるのである。
「この情報が欲しければ、あなたが隠していることを私たちに教えてください」
欲しいものには、その情報が如何なる金銀財宝も比肩できないものに映る。断る者などほとんどいない。それぞれ大切な思い出、自分の将来を左右する情報を差し出して、各々欲しい情報を得て、恋人やライバル、果ては敵国に勝負を仕掛けるのである。
そうして、組織はさらなる機密情報を集めて回る。故に、組織が知らぬことなど存在しないのである。
曰く、「組織の全体像は、総裁ですら知らない」
組織の構成員になるのは簡単である。ある「ルール」と「暗号」を手に入れれば、それが即ち組織のメンバーの証である。
構成員を名乗る名乗らないも自由である。構成員同士、顔も知らないまま、特殊な連絡技術を用いて情報を伝えていく。その情報網の終点こそ、組織の総裁である。ただ一人、組織の総裁のみがすべての情報を握り、さらなる情報を求めて「客」の元を回っていくのである。
構成員が対立しようと構わない。お互いに仲間であることを知らないのだから。組織の構成員は、毎日相当数が脱落し、相当数が加入する。
いつからその組織が存在するかはわからない。一説には「偽りの太陽」が空に昇ったころに、誰かの手によって創設されたのだとか。
ただの一組織でありながら大国とも対等に渡り合う、それでいて存在自体が曖昧な、なんとも奇妙な情報機関。
一見二聞しようとも疑わしい、街に出回るいい加減な噂(街談巷説)のような曖昧さから、その組織は「街談機関」と呼ばれた。
(続き http://hiroba.dqx.jp/sc/diary/127254852654/view/4194682/)