「そうだアレがあった、おいお前、これ持ってけ」
と言って、俺は腰の道具袋から小石大の物体を取り出し、怪盗もどきに1個手渡した。
「なんだいコレ…って、ああコレか。持ってるから要らない」
と、怪盗もどきは手渡した物を突き返した。若干イラッと来たが、これのことを知ってるんだったら話は早い。
「やることはわかるな?俺が煙幕撒くから、煙が無くなる前にキラーマシンに近づいてコレを眼に…」
「煙幕撒いたら僕らもキラーマシンが見えなくなるっしょ」
「そこはホラ、向こうから見つけてもらうんよ」
「…結局ガチ戦闘じゃんそれ!なんだよ、冴えた策があるかと思ったら結局は肉体労働か!」
「文句言うなオメーよ!他になんか頭いい方法があるってのかよ、この状況で!」
「ん~~…無いや!それでやろう!」
「おーしやろう!さっさと連中解放して帰るぞ!」
相方の同意は得られた。作戦のツッコミどころとかは考えないでおこう。
あとは強盗団の連中にこちらの意図を伝え、上手いこと逃亡してもらう。いよいよ物陰に隠れている場合ではなくなった。
心臓がバクバクする。作戦が決まったと言えど、やっぱりあの青い機体と対峙するのは怖い。
…えい、鉄くず野郎がなんだ。冷静に考えたら借金取りの方が怖いに決まってる。気張れ、俺!
俺は一呼吸すると、一気に屋敷後ろの広場に飛び出した。
そして俺は、みっともなく逃げ回る強盗団の面々に向かって叫んだ。
「おーい、強盗のおっさん方!こっちを見ろ!」
俺の姿を捕えた強盗団のオーガの片割れがこちらを見た。事態が呑み込めてないのか、一瞬いぶかしげにしたが、すぐに自分たちが雇った連中のことを思い出したようだ。彼は怒り心頭の形相でこちらを睨んだ。
「あ!お前ら陽動組か!!!なんてことをしてくれたんだテメェら!!!お前らがしっかり陽動しなかったせいで…!!」
思ったより迫力ある怒号が飛んできて、一瞬固まってしまった。
「い、いやあ、何分引き付けるか指示なかったし」
不意に出た不用意なセリフが、ふざけてるように見えたのだろう。他の強盗団の連中まで怒鳴ってきた。
「全部テメェらのせいだ!犬の首輪が取れねえのも、トンジットがドジうって魔物ども起こしちまったのも!」とドワーフが叫ぶ。
「お前らが十分に陽動出来てたら、アルゴが背中斬られてやられることもなかったんだ!」と人間の1人が憎々しげに叫んだ。
「覚悟しろよ、そら豆みてえなそん面剥いで、展望台に晒してやる!」とまた別の人間が叫んだ。
「うわぁぁぁキラーマシンが来た!キラーマシンが来るよおおおお!」と、先ほどとは別のオーガが半狂乱で叫んだ。こいつだけ、俺のことが見えてないらしい。その悲痛な叫びで、恐怖が他の面々にまで伝染してしまったようだ。その場は呪詛や悲鳴が鳴り響く阿鼻叫喚の図となった。
「テメェから斬られろ!」「キラーマシンが来るよう!」「お前らさえいなければ!」「お前らに財宝なんかくれてやるかあああ!」
最初は我慢して、なんとかこっちの作戦を伝えるよう努力したが、強盗団はあまりの混乱模様で聞く耳を持たなかった。謂れのない(こともないが開き直った)呪詛や怒号を浴び続けるうち、ムラムラと怒りが沸き上がって、最終的に俺もぶち切れて叫んだ。
「ああ、そうかい!!そこまで言うんだったらもう知らねえ!ついでだから助けるが、ここまでやるからには宝は俺が持ってくぞ!お前らこそ、よく覚えていやがれ!!やるぞ、魚男!」
そして俺は、持っているありったけの煙幕をその場にぶちまけた。
怪盗もどきが屋敷の表側で煙幕をぶちまけたときと同じように、辺り一面真っ白い煙で覆われた。2歩先が目視できないくらいだ。多分、奴も俺と同じところで煙幕を仕入れているな、などとどうでもいいことを思いつつ、俺は低く身をかがめた。ここから先が本番だ。
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