俺は化け狸に話を振ることにした。
「2,3個疑問がある。お前のそれ、宝の地図の『写し』っつったな?なんで本物を持ち去らなかったんだ?」
「ごもっともな疑問だな。俺が地図を発見した段階で、なんぞ捻りもなく、ただ地図を持ってきゃあ、強盗団の連中に宝の在り処を知られるってややこしい状況にならなかったって話だろ?
ま、これは『なるべく屋敷側のヒトどもに気取られたくない』って俺様の用心が裏目に出た結果よ。笑いたければ笑うがよい。」
と、化け狸は苦笑しつつ胸を張った。
泥棒の立場としては、物を盗んだことがバレて、下手に世間を騒がせても、今後のシノギ(商売)がしにくくなると困るのだろう。一応、筋が通っている。
「なるほど、地図の写しがある理由はわかった。
じゃあ2個目。さっきも言ったけど、宝の在り処がわかるなら、なんでさっさと埋蔵金を取りに行かない?わざわざこっち(裏クエスト屋)に来た理由は何だ?」
まさか協力を仰いでおいて、埋蔵金を独り占めできると思ってはいないだろう。どうせ宝を得るなら、独力で確保した方が一番取り分が多いに決まってる。
そういう思惑を言外に指摘すると、
「それは、まあ、アレだ…ほら、うん」
と、ここに来て初めて、化け狸が言い淀んだ。
「なんだよ」
と俺がせっつくと、化け狸は渋々と、
「…妖怪はな、実はケンカが弱いのだ…」
と、拗ねたような口調で言った。
「…あ~…」
合点がいった。対等な味方というより、護衛役が欲しいってことか…相手が多人数な上、自分も荒事に弱いとあったら、せめて護衛を作りたいとは思うわな。
なるほど、そりゃあ言いにくいわ。若い男としては、「自分は弱いから俺を守れ」なんて頼みにくいよな…
「ま~、その気になれば一人でも埋蔵金くらい裏からこっそり奪えるし!?味方がほしいってのもあくまで不測の事態に備えての話だし!?お宝山分けって言うのも、頑張るお前らを見て慈悲をかけてやろうと思っただけだし!?」
と化け狸は強がりを言った。
「とまあ、色々言った訳だが。疑問は解消したか?」
化け狸がそう促したので、
「一応」
と、俺は理解の意を示した。
未だに怪しさ満点ではあるが、少なくとも強盗団の連中よりは計画性がありそうだ。
しかし、相変わらず埋蔵金が実在するのか、という疑問は晴らせずにいた。強盗団連中から奪ったところで、その労力に見合う報酬を得られるかどうか…
とはいえ、地図が実在していたということは、何処かに何かが埋まっているのは確実らしい。なんにも取り分がない現状よりは、何かを手にした方がマシだと思った。
俺は化け狸の提案を受け入れることにした。
「じゃあ、改めて。お前ら、埋蔵金奪うの手伝ってもらえない?取り分は無論、3等分で」
と、化け狸は再度言った。
「俺はいいぞ。強盗団の連中よりか、いくらか信用の置ける雇い主みたいだしな。おい魚男、お前はどうする?オメーからは質問ないのか?」
と、さっきから黙り通しの怪盗もどきに話を振った。
「僕も狸クンには特に。あの美しくないコソ泥たちよりは面白いヒトだしね、味方するならこっちが良さそう。
それよりマスター!?むしろマスターに質問したいんだけどいいかい!?」
怪盗もどきは何故か、裏クエスト屋店主に話を振った。
ここまで黙って話を聞いていた店主は、無言のまま話を促した。
「連中の構成メンバーに女性はいないだろうね?万が一入っていた場合、僕は迷わずコソ泥連中の味方にならないといけないんだがね!?」
「はっ!!!?」
俺と化け狸は揃って驚愕した。とんでもない爆弾発言だ。今まで散々強盗団の支払い意思の無さを元にした話をしていたのに、今更奴らの仲間になるって!?
(続き・https://hiroba.dqx.jp/sc/diary/127254852654/view/5724664/)