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バキッという気持ちのいい音が響いたとき、俺はつい「よし、当たった!!」と呟いてしまった。
俺と怪盗もどき、化け狸がこのダンジョンに侵入してから数十分後、何人組かの男たちが大声で会話しているのを聞きつけた俺たちは、大急ぎで男たちの後を追った。会話の内容からして、彼らは問題の埋蔵金を見つけたのだろう。
事ここに至っては止む無し。正面から仕掛けて、埋蔵金を強奪するべし。
というわけで、まずは俺が「ゆめみの花粉配合・特製煙玉」で先手を取ったわけだ。
ここではまず、通路の角越しにカーブボールを投げて、見えない相手に見事命中させた俺の制球力をほめてくれ!!めっちゃ頑張って練習したんだ!!
角から飛び出した俺と怪盗もどきは、通路にたむろしてた5人組の男たちと相対した。
床にはドワーフが一人のびている。さっき投げた煙玉がクリーンヒットした奴だろう。
すまぬ、奪い奪われがこの業界の常だと思って、あきらめてくれ。
ちなみに、化け狸はいつの間にか姿を消していた。俺たちがこの男たちを追っている間に別行動を取ったらしい。
どうするつもりか知らんが、あまり気にしている余裕はない。どっかのタイミングで参戦することを祈ろう。
「て、テメェらは、コールタールの豪邸にいた…!」
通路の一番奥にいたオーガがわなないた。あいつが、この強盗団のリーダーであるオルカだろうか。
…よく見たら、そのオーガのすぐ近くに宝箱があるじゃないか!これはまずい、確保されたら面倒なことになる。
「おおとも、我こそお前らに雇われた下っ端仕事人よ!お前ら、埋蔵金を丸ごと持ち逃げするつもりだろうがそうはいくか!正当な報酬も払わずにトンズラ決め込もうなんて、いくらボンクラ仕事人の俺といえど黙っちゃいられねえ!」
「右に同じく!君たち、まだ報酬を支払う意思があるのなら、その宝箱を置いてこの遺跡から立ち退くがいい!そうでなくば、この白雷の怪傑が操る『白雷七つ道具』が火を噴くぞ!」
「う、うるせえうるせえ!!これはお前らが悪いんだぞ!お前らが陽動に失敗しなければ、こんなに慌てて宝探しする必要もなかったんだ!!依頼されたこともろくにこなせない連中に支払う金なんてねえんだよ!!」
「何言ってやがる、俺たちはちゃんと仕事をこなしたぞ!きっかり10分、あの豪邸の衛兵たちの気を引いて、お前らが侵入する時間を稼いだ!その先の作戦は全部お前らがやったことだ、俺らに責任おっ被せるようなことじゃねーだろ!!」
ほんとは9分47秒だけど。まあ、誤差だ誤差。
「ガーーーーッほんっとに鬱陶しい連中だ!!ここまで来て目の前の埋蔵金を渡すバカがいるものかよ!お前ら、その2人をタコ殴りにしてやれ!!宝箱を開けるのはその後だ!!」
オーガの号令を合図に、残りの強盗団メンバーが構える。
相手は人間2人、ドワーフ1人、そしてリーダー格のオーガ1人。
さっき煙玉でのしたドワーフはまだ床に転がっている。煙玉のゆめみの花粉がちゃんと効いているなら、この戦闘中は起きまい。
対するこちらは人間1人、ウェディ1人。人数では負けているが、さて。
やるなら速攻勝負。敵は倒さずともよい。適当にあしらって、あの奥の宝箱を確保したのち、早々に脱出。
…よーし、やってやろう。俺は懐の小道具を握りしめた。
「やっちまえーーーっ!!!」
オーガが叫ぶのと同時に、戦端が開いた。
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