「その人間をブチのめせガラル!この野郎、後ろに隠れてチマチマ攻撃しやがって…!」
「それより、宝はどうした!?お前らが見つけたはずだろう!?」
「…!!そ、そうだアイツ!!プクリポがいたんだ!そいつが宝箱をかっぱらって逃げちまった!!透明になる野郎だ!!」
「ハアッ!!?なんだそりゃ、魔道具持ちが来てんのかよ!?そんなのどうやって追えってんだ!?」
「何人か洞窟の入り口に回させて閉じ込めろ!入り口は一か所だけだ、逃げ場さえなくせばなんとでもならあ!」
「おい、コーチャ!ゴンチャとゴーベスクを連れて入り口に戻れ!厄介な奴が宝箱を持っていっちまった、透明化できる野郎だ!入り口塞いで逃げ場をなくせ!」
残りの強盗団のメンバーがバタバタと動き出す。化け狸め、簡単に捕まるとは思わないが、この状況だとどん詰まりになっちまうかもしれない。なんともまずい展開だ。
「で?こいつら、なんなんだよ」
「コールタールの豪邸でちょっかい出してきたやつらだ。分け前よこせって言って、襲ってきやがった。散々てこずらせやがって…!」
「お前が敷いてる、そのウェディもか」
「こいつが一番やべえ。とんでもねえ野郎だ、俺以外の3人、あっという間にのされちまった…この野郎、ぶっ潰してやる…!!」
「ああ、そうだな、一回シめて気絶させねえと、後々厄介だ。また襲ってきかねないな…!」
オーガが腕にチカラを込める。こいつらの馬鹿力で殴られるのは御免だ。
「フンッ…!」と、俺も挟まれた足に渾身のチカラを込めて、オーガを引きはがす。そのまま横に倒れて逃げたが、袋小路は相変わらずだ。
「あっこの野郎…!」と、オーガが再び詰め寄ってくる。次に組み伏せられたらアウトだ。もう手の打ちようがない。
俺は脳みそを回転させて、逆転の目がないか探った。
手元の小道具の内訳を考える。通路の状況を考える。僅かな時間で取れる行動を考える。
そこで俺は、通路の壁の大きなヒビに思い至った。壁を隔てたその先は恐らく、ガタラ原野を流れる川の底だ。
…あー、これはやりたくないな、心底やりたくない。けどこれしかなさそう。
腹は決まった。じゃ、やるか。
そこから俺が取った行動は四つ。
ひとつ。懐から2個の丸い物体を取り出す。大小2種類。
ふたつ。小さい方の丸い物体を飲み込む。
みっつ。大きい方の丸い物体に、小さく「メラ!」と呟いて火を付けた。
そして、四つ目。火を付けた丸いものを、後ろの壁に投げつけた。
火を付けたものが何だったかって?
その場にいた全員が目を剝いた。オーガ2人が一目散に逃げ出す。
怪盗もどきは地面に伏したまま、「マジで何やってんの!!?」と叫んでいたが、悪い。耐えて。
「呪文点火式…圧縮・八尺花火!!!」
次の瞬間、赤い閃光と巨大な爆発音が通路を覆う。激しい熱と衝撃が身体を襲った。
壁のヒビが更に大きく裂けて、その裏で流れていただろう川の水がなだれ込む中、俺の意識は途絶えた。
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