「で、マジでなんでアンタがこの街にいるのよ。言っとくけど、裏クエスト関連なんて抜かしたらしょっ引くわよ」
秘密警察の長たるポポムは、件の店長が展開する裏クエスト事業とも対立している。密猟だったり強盗だったり、時に法律と真っ向から敵対する裏クエストは、「法律を掻い潜ってでも治安を維持する」というスタンスのポポムたちにとって、純粋な排除対象であるわけだ。
そして、裏クエストを受注する俺のようなやつも、本来は『容疑者と警察』という剣呑な関係のはずなのだが、そこはやり様である。紆余曲折の末、当時の俺とポポムは、情報提供を条件に見逃してもらったり、強制労働の見返りに報酬をもらったりと、ギブアンドテイクな関係を築いていた。
…まあ、実際には使いっ走りにされていただけだったか。この辺のことも、別の機会に話そう。
「別に俺がどこにいようと構わねーだろ。地元なんだよ、この街は。そのくらい知らないアンタじゃないだろう」
「知ってるわよ、一応カマかけただけ」
「会うなりカマかけんなや。そんなに信用ないかよ、俺は」
「むしろ、密猟未遂の容疑者が信用あると思う方が不思議だわ。それ以外にもどれだけ余罪があると思ってるの?私が温情をかけているからこその現状だと思いなさい」
「へいへい…そういうアンタこそ、エルトナからドワチャッカに出張るのも珍しくないか?もしかして左遷?」
「仕事」
「…俺、招集かかったりしないよな?」
「安心なさい。本来の担当が産休で、代役が顔役の私に回ってくるくらいの人材難な仕事だから。間違っても『限りなくホワイトに近いグレー』という名の無能にお鉢が回ったりしないから」
「お前、次その二つ名で呼んだらぶっ飛ばすぞ!?」
「じゃあ、アンタも次に『時の何某』なんて呼んだら、はらわた八つに裂いてモリナラに捨てるわよ!」
ドワーフの女が、真顔のまま青筋を立てた。
売り言葉に買い言葉。数秒睨み合ったが、お互いにため息を吐いて引き下がった。
「用がねえんだったら、もう行くぞ。昨日から頭痛がひどいんだ、図書館で寝なおす」
ポポムが怪訝そうな顔をした。
「何よ、体調悪いなら宿屋で寝てなさい。むやみに出かけて風邪菌を市街に広げないでよ」
「さっきチェックアウトしちまったんだよ…この辺で他に寝られるとこなんて知らねえし」
「じゃあ、せめて公園のベンチにしなさい。堅気に迷惑かけるな」
「だから、どこに行こうと俺の勝手だろうがっ」
イライラしながら返答したら、ポポムも機嫌を損ねたようで、
「…あっそ。じゃあ知らない。もうどっか行きなさい」
と、言葉の棘を隠そうともせずに言った。
俺もそのまま、ポポムとすれ違うように、階段方向に歩き出した。
「…アンタ、何を死にそうな顔してんのよ」
すれ違いざまにポポムは言った。俺は何も答えなかった。そんなの、俺が知りたいよ。
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