「――ふむ。意気良し」
フィンゴルは仔細を聞かず、そのまま部隊長たちに向けて言った。
「遊撃隊に参加させよう。戦地を広範囲で動き回る遊撃隊であれば、彼の情報資産を狙う呪術王の的をかく乱し、突入部隊の負担を軽減する効果が期待できる。また、対人戦の戦闘適性から見ても、呪術王に直接ぶつける戦力としてなら、彼にも作戦参加の余地があると考えるが、どうか?」
しばらく、ざわざわと部隊長たちの論議が続いたが、やがて議論の声も収まった。賛同が得られたようだ。
「異議なしか。ポポム、さっさと締めろ」
フィンゴルに促され、ポポムが毅然として号令した。
「では、最終ミーティングはこれで終了とします。各自、作戦準備に移りなさいっ!」
ざっ、と四人の部隊長が立ち上がり、作戦会議卓を離れた。机の周りには、俺とポポム、副官ベレー、フィンゴル、そして仮面バスターという謎の男が残った。
「…さて、用心棒。突入部隊よりやばいポジションが決まったわよ」ポポムが俺に言った。
「何、遊撃隊って」
「突入部隊とかの援護もしつつ、呪術王を直接狙って捕縛を目指す。回復役なし、怪我したら自分で回復。休憩は自己判断だけど、多分そんな暇はない。ほんとはこのジェ…仮面バスター一人でやらせるつもりだったけど、もうそんなこと言ってられないわね。はっきり言って、突入部隊より過酷よ」
うわあ。帰りたい。顔に出そうになった弱気を必死に隠した。
「詳しいことはこの仮面バスターに聞きなさい」
ポポムが紹介すると、仮面バスターなる男がずいっと前に出た。会議中と同じく無言。なんなのこいつ。
「じゃ、そういうわけで。ここまでお膳立てしてもらったんだから、早期脱落は許さないわよ。せいぜい役に立ちなさい」
「――わかった。ありがとう、助かった。呪術王は任せろ」
俺の決意に対して、ポポムはひらひらとてを振って答えた。
話は終わったとばかりに、仮面バスターが俺の手を掴んでグイグイと引っ張った。別の場所で作戦会議をしようということだろう。ぶっきらぼうすぎて上手くやっていける気がしないんだが…
立ち去る俺たちの後ろ手に、ポポムとフィンゴルの会話がちょっと聞こえた。
「…助かったわ、フィンゴル」
「上司のいる奴は大変だな」
フィンゴルの発言に、なんだか含みのある言い方だな…と思ったが、詳しく考えている暇はない。俺は早々にその場を離れた。
――その後、昼辺りまで仮面バスターと作戦会議を行った後、俺は呪術王の待つ地下街に向かうことになるのだが、結論として、これらの打ち合わせは無駄となった。
『追い出し漁』作戦は、決行前に頓挫するのである。
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