ので、額を地面に押し付けて平謝りする。
「いや、ほんとに悪かった!俺も請け負った仕事を放り出して、人様に迷惑かけるのは本位じゃなかったんだ!一昨日の晩に質の悪い知り合いに絡まれて…その、一晩中宿屋詰めになってたんだ!知り合いの目を掻い潜って抜け出した頃には、もうまる一日経っちまって後の祭りだったんだわ!」
「それにしても念話石(チャット)でメッセージ残すくらいできたでしょうが!!」
「いや出来なかった!!マジで!!石も取り上げられてたんだよ!!じゃなかったら連絡ぐらい入れてたわ!!普段だって、やむを得ず休む場合は毎度連絡入れてたろ!?誓ってわざと連絡入れなかったわけじゃねんだわ!!」
詰め寄る店主を相手に必死に弁明する。
ちなみに、どっかに監禁されてたなんて事実はないのだが、馬鹿正直に「妖怪に拉致されて一晩中気絶してた」なんて話したところで信じてもらえないだろう。連絡したくてもできない状況だったのは本当だし、辻褄合わせの嘘はわりと日常茶飯事だ。我ながら口がうまくなったもんだ。
店主は相変わらず眉を吊り上げていたが、こちらを睨む視線は若干柔らかくなった。一応、信用してもらえたらしい。
「…ふんっ、やむを得ない事情があったんなら仕方ない…で済ます程、裏クエストは甘くないよ。先方とは丸く収まったとはいえ、君のせいで無用な手間が発生したのは事実だ。この埋め合わせをするくらいのことは覚悟しているだろ?」
「うっ…それは…その…」
「…歯切れが悪いな。もしかして、ポポムへの義理立てみたいなものを考えてる?」
「…っ!?なんで知ってるんだ!?」
図星を突かれて、思わず顔を上げた。
「ポポムの呪術王対策チームと、『虚ろの呪術王』がこの島に集まっていることくらいは僕も知ってる。君、ポポムからなんか命令されて戦ってたんだろう?ヒトんちの手勢を勝手に引き抜いて戦働きをさせるとは、ポポムには呆れたもんだ」
「だ、だったら話が早い。あんたの言う通り、俺は今対策チーム側で戦ってるんだ。あんまり無茶な命令は…」
「脱走しちまえよ、そんなもん。ポポムの口車に乗せられてる場合か」
店主は鬱陶しいものを振り払うように言った。
「ジャック君、君みたいな木っ端冒険者が、この異常な戦場でどうこうできるわけがないだろう?そんなこともわからないとは、君らしくないじゃないか。
君は今、人類の夷敵『虚ろの呪術王』の逮捕なんて御大層なものの熱に当てられて、自分の分際を見失ってるんだ。自分の才能を見誤ったまま戦ってたら、早晩死ぬのは君だよ」
「…そんな言い方…」
店主のぞんざいな言いざまに、何も言い返せなくなる。
「そんなことより、こっちの『埋め合わせ』を優先させてもらおう。といっても、別に君に何かしてもらう必要はないんだ。今こうしてるように、神妙にお縄について、大人しくしてもらっておけばいい」
「…なんだって?」
それはつまり、戦働きやなんらかの小間使いではなく、捕まっているだけで果たせる役割だということだ。そんな役割、人質しか思いつかない。だとしたら、脅す相手は誰だ?
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