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自宅の菌類

アオマリモ

[アオマリモ]

キャラID
: RU977-303
種 族
: ドワーフ
性 別
: 男
職 業
: 魔法戦士
レベル
: 130

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アオマリモの冒険日誌

2023-11-07 21:53:41.0 2023-11-07 22:04:33.0テーマ:その他

街談機関 その7「勇魔跳梁」57


 ――それは、あっという間の決闘だった。

 バイキルラッシュ<過剰強化呪文>だか何だかの呪文で、ネクロバルサの剛力を宿した呪術王の左手が迫る。
 いくら戦闘経験が浅いといっても、まともに見積もってレベル差四十はあろうパワーは、当然のように脅威だ。左手の軌道をこれでもかというほど注視しながら、攻撃をよけ続けた。
 呪術王の左手が俺の身体をかするたび、鋭い裂傷が走る。風切り音が倉庫に響くたび、俺の余力が目減りしていく。時間が立てば立つほど、押し切られるリスクは高まる。故に短期決戦。

 だが、相手はどうやっても隻腕。腕を構えることもできない右半身は、左腕を雑に振るうたびにがら空きになる。
 何度目かの間隙を縫い、ボディブローを叩きつけた。ぷっ、と、呪術王は短い息を吐く。
 ぎ、と歯を軋らせた呪術王は、俺の足を踏みつけると、再度左腕を大きく振るった。狙いは俺の顔面。クリーンヒットすれば首が吹っ飛ぶ。

 俺は歯を食いしばって、そのテレフォンパンチを『敢えて』受けた。
 呪術王の拳骨が、俺の頬をしたたかに打つ。着弾する寸前で身を引き、威力を殺して受ける。ガッチュ、という妙な音が口腔から聞こえた。
 飛びそうになる意識を必死に繋ぎ止め、俺は呪術王の拳骨に左手を添えた。
 そして、右手は道具袋へ。引っ張り出した『それ』を、伸びきった呪術王の左手首に密着させる。下手から、弧を描くように、自然に。

 カチャリと、軽い金属音が倉庫に響いた。
 呪術王に満ち満ちていた剛力がほどけた。呪術王は、これ以上ないほど目を見開いて、自身の腕にかけられた『それ』を見た。

 手錠である。いつぞやの裏クエストの報酬として受け取った、とあるどうぐ使いの試作品。
 この手錠をかけられた者は、自身にかかった魔法効果の全てを失う。もちろん、新たに呪文を発動することもできない。名器・マホトン錠の後発品だった。

 衝撃にわななく呪術王。魔法の守りを失った彼は、見た目こそ変わらなかったが、どこかしなびた印象があった。
 一芸のみに頼む者から一芸を奪えば、こうも脆くなる。

 「――呪術王カワキ。お前を、逮捕してやる」

 ぺ、と、折れた奥歯を吐き出し、カワキの眉間に叩きつける。単純な目つぶしだ。なんの面白味もなく、カワキは目を閉じる。
 一秒にも満たない間隙で、掴んだままだった呪術王の肘を抑えて、回転するように地面に打ち付ける。倒れ伏すカワキの背中に覆いかぶさり、仕留めにかかる。
 右腕をカワキの首に巻き付け、左手でロックをかける。そして、万力のように締め付け、気管を圧迫する。
 完全に極まった場合、短時間で人体の意識を落とす魔技。名をチョークスリーパーという。

 地獄のような苦しみに対して、カワキは無抵抗だった。脳に回る酸素を断たれ、意識がブラックアウトしていく最中も、カワキはぼうっと、地面を見つめていた。
 ろくに言葉も発せないはずの状況において、カワキはぽつりと、言葉を落とした。幻聴だったかもしれない。

 「――そうか、こうも弱いなら、俺は怪物じゃなかったんだな――」

 フッと、カワキの身体から、唐突にチカラが失われた。
 すぐさま、俺はホールドを解いて、カワキの息を確認した。よだれを垂らしていたが、息は止まってない。
 よかった、とは思わなかった。意識を取り戻す前に、施錠できていなかったカワキの右腕にも、手錠の空いてる方をかけた。

 「――所詮、主人公やラスボスって器じゃないんだよ。お互いにな」

 俺はふーーーっと、長いため息をついた。達成感で弛緩しそうになる身体を叱咤し、俺は立ち上がった。

 ――〇月×日 土曜日 昼十四時十五分過ぎ。
 呪術王カワキ、確保。

・続き:
https://hiroba.dqx.jp/sc/diary/127254852654/view/7636357/
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