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自宅の菌類

アオマリモ

[アオマリモ]

キャラID
: RU977-303
種 族
: ドワーフ
性 別
: 男
職 業
: 魔法戦士
レベル
: 130

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アオマリモの冒険日誌

2024-01-08 20:50:10.0 2024-01-29 23:37:02.0テーマ:その他

街談機関 その8「精算/清算」5


「しかし、噂もアテになんねえな。『二本角』って異名はどっから来たんだよ。生えてねえじゃん」

 俺が軽口を叩くと、キリンは何も答えずニコッと微笑んだ。そして右手を顔の横まで上げて、こめかみを軽くトントンッと叩いた。
 ビッ、と、指を弾くような音が響いた。その瞬間、キリンの髪で覆われた後頭部から黒い何か――硬質な角が現れた。
 思わず目を見張った俺を見て、キリンはクックッと、心底楽しそうに笑った。

「わたしの姿形ほどいい加減なものはないよ、用心棒くん。暗殺なんて因果な商売をしておいて、いつ何時も同じ姿でいるわけがないだろう?角の生やす、生やさないくらい造作もない」

「……モシャス<変身呪文>か!!」

「そ。あの裏クエスト屋の男も、そのくらいのことは推理していただろう?わたしは常に五、六人の姿を使い分けながら活動している。どんなスパイであっても、『わたしが本当は誰なのか』突き止められたものはいない…」

 再び、ビッという短い音とともに、キリンは『変身』した。俺と同じくらいの背丈だったウェディの姿が消え、その三分の一ほどの人影が現れた。知らないドワーフの女だ。
 ドワーフは、メルトアだったときよりも幾分高い声で話を続けた。声音を変えてるだけとは思えない、別人の声だった。

「もっとも、わたしのこれ(モシャス)は、ただの幻覚じゃない。本当に変形している。異種族はもちろん、肉、骨格、声帯の形、目の色――」

 そう語りながら、キリンは目の前で次々と姿を変えていく。ドワーフの顔が消え、エルフの女が現れた。くるりと回ると、プクリポが現れた。一歩後ろに下がった瞬間、メルトアではないウェディの女が現れた。
 舞を踊るようにくるくると歩きながら、カシャカシャと、写真をすり替えるように、目にも止まらぬ速さでキリンは変身を繰り返した。そのすべてが別の種族、別の背丈、別の肌色、別の声。どれほどのバリエーションがあるというのか。
 それは、かつて化け狸に見せられた変身劇よりも堂に入った、一人だけのドレスアップショーだった。

 圧倒される俺の目の前に、キリンが立った。黒髪の人間に変わったその背丈は、俺とほぼ同じ身長だった。いたずらっぽく、その右手が差し出され、俺の左耳を触った。

「全部が全部、本物だ。かといって、そのすべてがわたしの『正体』ではない。
 わたしに狙われて生き延びるには、わたしの正体を見抜かないといけない。結果として、わたしから逃れた者は、いない。そういうものだ、わたしは」

 金の瞳に射すくめられる。縦に細長いキリンの瞳孔は、竜の瞳を連想させた。
 息を呑んだ俺は、身動きが取れなくなった。

「なーんちゃって!!」

 俺の反応をひとしきり楽しんだのか、キリンは急におどけた。俺の耳から手を離した後、からかうように手をぐっぱっと開閉してみせた。
 俺のむすっとした顔をよそに、キリンが踵を返すと、彼女は再び変身した。影が暗転し、再び人影に色が差すと、その姿は今までのような『少女』ではなかった。
 背丈は俺の目線より頭ひとつ高く、今までの姿の中で最も大きい。肌はくすんだような赤色で、ほうれい線や顔の皺は不惑を過ぎた年代を思わせる。額からは小さな角が生えている。
 オーガの姿を取ったキリンは、どっこいしょ、と難儀そうに椅子に座り、にやにやと俺を見た。
 先ほどまでの少女の姿よりも随分貫禄がある。こういう姿なら、キリンの非常に図太い精神とも見合う気がする。ひょっとしたら、これがキリンの本来の姿なのかもしれない。

 なるほど、というかやっぱりというか、キリンはおばはんだったのか。妙に得心した俺をよそに、キリンは話を続けた。

・続き:
https://hiroba.dqx.jp/sc/diary/127254852654/view/7711032/
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