夜分遅くにこのレポートに目を通していただき感謝する、
植物学者のバアルゼブルだ。
今回は去年行われた探検隊による調査の中、私の目に留まったものについて記述したいと思う。
ジュレー島上層の各所に点在する巨大な巻貝型の貝とその近くにあるトゲのついた貝。
これは古代の建造物だいいや自然にできたのかもしれないと様々な意見が飛び交う中、私は一つの革新的な考えに至った。
ヴェリナードやジュレット方面には海草やサンゴに酷似した植物が生息していて、巨大な貝殻やその貝殻によく似た貝を背負うモンスター・・・
私が思うに、ヴェリナードやジュレット方面は元々海の中だったのではないだろうか。
アストルティアの様々な生態系に異常をきたすほどの災厄、レイダメテスが襲来する前まで生存していた古代生物。
その化石がこの巨大貝の正体ではないのかと考えた。
巨大な巻貝とつがいになっている尖った貝の形は、現在生存しているモンスターととてもよく似ている。
そう、生息地がここから近い「マリンスライム」である。
かつて古代のウェナ諸島に生息していたマリンスライムは巨大な体躯を持ち、かつオスメスに分かれていたのではないだろうか。
この写真に写る巨大なマリンスライムの化石はメスと思われる巻貝の個体が一体、
そして両脇にはオスのものと思われる化石が2体存在している。
メスの貝の形は現在のマリンスライムとは少々異なる構造だが、かつて私が調査に向かった異世界には「スライムカルゴ」というマリンスライムの亜種が存在するため、
マリンスライムが突然変異でカルゴに変わったように、スライムカルゴもまた突然変異を起こしてマリンになる可能性が考えられる。
当然突然変異が起こるには相応の、生態系に異常をきたす要因が存在する必要があるが、
すでにこのアストルティアは生態系を変え得る脅威にさらされている。
かつてアストルティアに襲来した災厄、偽の太陽「レイダメテス」のことだ。
巨大生物として海を支配していた古代のマリンスライムは、レイダメテスにより食料を失い、住む場所を失い、絶滅の危機に瀕した。
しかし、彼らは生き残るために自らの存在を変えてでも生きようとした。
なるべく少ない食料で済むように巨大だった体躯はみるみる小さく、
そしてオスとメスの遺伝子を組み換え両性具有として繁殖を容易に行えるようになり、
レイダメテスの激しい業火に耐えうる貝殻を形成し直し、氷の呪文であるヒャダルコを扱えるようになった。
そして肺呼吸を行えるようになり、地上での活動も可能にしてみせた。
レイダメテスが去った後も種族の存続を図るために進化、変化を繰り返した結果が現在のマリンスライムである。
というのが私の考案した仮説である。
元々植物学以外の事は専門外の私だが、彼らの生態を巡り様々な考察を重ねるうちに真相へ限りなく近づくことができたようだ。
彼らは明日を生き抜くために磨いてきたヒャダルコ、自らの身を守るために再形成を行った貝殻を背負い、今も生きている。
探検を通じて私の知識の視野を広げることができた、良い旅であった。
これを読んでいる君たちも、マリンスライムを見かけたら是非じっくり観察してみてほしい。
新たな発見がそこにあるかもしれない。