「そのままにしておいて。」
そう言うのが精一杯の強がりだった。
彼女が庭のプランターさえ持っていくだなんて。
そんなにこの部屋で過ごした日々の痕跡を残したくないのかと余計に気が滅入った。
たしかに何泊も外泊し、家庭をかえりみることなく、ひたすら仕事に打ち込んだ。
ただやっぱり帰る場所はこの家だったし、
彼女が望むように花のアーチも作った。
一人で暮らしていた頃には考えられないくらいファンシーなできばえだ。
どこですれ違ったのか、今となってはまったくわからない。
あれから半年が過ぎ、ようやく心の傷もふさがってきた時に
彼女を街で見かけた。男のあとを2、3歩下がってずっとついていってる。
少し苦笑した。相手によって変わるもんなんだな。
そして何の感慨もわかなかった。
なぜなら、僕の隣には新しいパートナーがいる。
ホイミンさんだ。なまめかしい触手が魅力の彼女だ。