会社のドラクエ仲間に、ガッチガチの男性廃プレイヤーがいる。
全職カンスト、各種装備完備、理論値アクセと、こと戦闘に関してはかなりのプロフェッショナル。
野良でのボス討伐をこよなく愛し、「どんなキッズが来ようと、俺が勝たせてやる」と豪語する。
その戦略アイデアは計り知れない。
「ムッチーノ化をやいばのぼうぎょで防ぐ」など、どこをどうしたらそんな思考にまわれるのか。
(それを聞いた当時は、ネット上のどこにもそんな話は出ていなかった)
もちろんリアルの仕事もしっかりこなす。
彼は他の社員よりもかなり仕事の量が多いのに、圧倒的に残業時間が少ない。
仕事の割り振りがうまく、部下にも信用されているからだろう。
彼が作成した書類は、随所に「なるほど」と思わせる工夫があり、非常に読みやすい。
さらに、若くして建てたこだわりの注文住宅に帰れば3児のパパ。
休日にはちゃんと子供たちと遊びに出掛ける。
まさに非の打ちどころのない『成功者』の彼。
そんな彼には、ひとつだけ大きな問題点がある。
実は彼。
ネカマなのである。
メインキャラは盛り髪エルフっ子。
常にピンクのカジノバニーヘッドにゴシックビスチェ、ステージチュチュにゴシックニーソを身にまとい、写真を取る際のポーズは究極呪文。
フレンドの女子陣と会話するために、スイーツやコスメの話題についての情報収集に余念がなく、ファッション用語やブランドにも気を抜かない。
最近では料理まで始めた様子。
ここまでしているのだから、さぞかし大量の男性プレイヤーをだましているのだろうと思いきや、なんとフレンドやチームのメンバーは全員、彼がネカマであることを知っていると言うのだ。
彼がネカマを続ける理由は一体なんなのか。
ある日、ふと聞いてみた。
「なぜそこまでしてネカマでいるのですか?」と。
彼はまるでなんでもないことであるかのように答えた。
「ロールプレイングゲームだからね、自分とかけはなれたキャラクターのほうがおもしろいじゃない」
…!
衝撃。
これは衝撃の一言。
ロールプレイ:役割を演じる
日本では「ロールプレイングゲーム」と言うと、ついついドラクエやFFといったコンピュータRPGを連想しがちだけれど、本来はD&DなどのTRPGのことを指していたはず。
そこでは小太りのおっさんが華奢なエルフの魔法使いを演じ、10代の女の子がガチムチの戦士を操っていた。
手に持つものがサイコロからコントローラになったって、その本質は変わらないはず。
彼が行っているのは、まさに正しく『ロールプレイングゲーム』なのだ。
今まで耳にした「僕がネカマである理由」の中で、一番納得できる回答だった。
これを聞いて、「すいません、そこらのウェディ♂を騙してニヤニヤするためのネカマだと思ってました」と素直に謝っておいた。
そうしたら「うん、それもおもしろいよwww」と返ってきた。
結局どうやねん!!