第三話 独白
クラウナの狂気に満ちた声が、静寂を切り裂いた。
誰も動かなかった。
誰も、何も言えなかった。
冷たく乾いた風が、山肌を撫でる。
その音すら、遠く聞こえる。
沈黙。
押しつぶされそうなほど、重い沈黙だった。
セリアは、震える指先を必死に握りしめた。
心が、軋む。
胸の奥が、苦しいほどに痛む。
――もう、隠せない。
セリアは、わずかに顔を上げた。
涙に濡れた瞳で、リクとバロムを見つめる。
喉が震えた。
声にならない。
それでも、絞り出すように、言葉を紡ぐ。
「私は……あなたたちを守ることで……罪を償おうとしてた……
ドルワームは……争いで大陸を焼いた。
私は、その血を引く者……!
背負わなきゃいけない、過ちを――!」
声は、震えていた。
それでも、必死に。
それだけを、伝えたくて。
セリアの涙が、静かに頬を伝った。
誰も、何も言わなかった。
ただ、セリアの痛みだけが、あたりを支配していた。
「……それでも」
セリアは、震えながら顔を上げた。
「それでも……私は、あなたたちと――共にいたい。贖罪でも、偽りでもない。
私の……本当の心で」
その言葉に、クラウナが甘美な笑みを浮かべる。
「美しいわね、セリア」
そして――
「じゃあ、壊してあげる」
冷たく告げた瞬間、冷気が爆ぜた。
氷の刃が、四方から迫る。
「くっ!」
バロムが盾のように立ちはだかり、リクがセリアを抱き寄せる。
「セリア、君を信じてる!」
リクの叫びに、セリアは、涙を落としながら、それでも静かに頷いた。
「バロムッ!!」
「任せろッ!!」
バロムが大槌を振りかぶる。
「震天轟槌・破天衝ッ!!!」
大地を揺るがす一撃。
砂塵が巻き上がり、視界が真白に閉ざされる。
――次に、クラウナの目に映ったのは、誰もいない空間だった。
「あら、逃げられたのね」
だが、クラウナは微笑んだ。
「まぁ、いいわ。
あの子の心に、もう種は植えたのよ……。あとは、ゆっくり咲くのを待つだけ」
狂気の笑みを残して、クラウナは闇へと消えた。