第十一話後編 勇気の光
――崩れ落ちた石の隙間から、雷が走った。
冷たい灰の世界を貫くように、ひとりの男が立ち上がる。
「それは違う!」
雷光が斧を包む。
「お前が未来を恐れたんだ! 過去に固執し、“未知の選択”に踏み出す勇気を持てなかっただけだ!」
「……勇気、だと?」
ハーゼルの声が震えた。
リクは叫んだ。
「確かに、時に過去は僕たちを縛り付ける。逃げようとすれば鎖のように縛りつく。
でも――それでも前に進む! 託された想いを、信じてくれた仲間を、裏切らないために!」
斧が雷を纏い、リクの背後に閃光が走った。
「だからこそ――お前をここで、討つ!!」
「認めてなるものかァッ!!」
ハーゼルの瞳が紅に染まる。
「私が信じた滅びの理が間違っているはずがない!!!!
未来は選べぬ! 選択肢など、ないのだァァァァ!!」
咆哮とともに、死霊の軍団が押し寄せた。
その勢いは、まるで世界そのものの否定。
「露払いは任せろッ! 震天轟槌・破天衝ッ!!」 バロムの槌が地を砕き、衝撃波が死霊たちを薙ぎ払う。
「光壁!!」
セリアが詠唱し、聖なる壁が展開する。
光が死霊を焼き、行軍を止めた。
「はぁあああああッ!!」
リクが天に斧を掲げた。
「雷光招来――ギガデインッ!!」
目が眩むほどの光の奔流、雷の雨が降り注ぎ、死霊の群れを焼き尽くした。
「ま、まさか……勇者の資質だと……!?
因果を超越し、“未来”を選び取る唯一の存在……!!」
ハーゼルの声に恐怖が滲む。
「――行けぇ!! リク!!」
「――今よ!! リク!!」
二人の声を背に、リクが閃光の如く踏み出す。
雷光が空間を裂き、ハーゼルに迫る。
「閃光戦斧――閃光烈斬ッ!!!」
光が弾け、轟音が全てを包み込んだ。
過去を乗り越え、未来を掴み取る者だけに許された――未来を照らす光の一撃。
「ぐ……あああああ……!!!」
ハーゼルの身体が光に貫かれ、崩れ落ちていく。
「わ、私は……間違っていたと言うのか……どうして……ごめん、父さ……ん……」
その言葉を最後に、ハーゼルの姿は光の粒子となって消えていった。
ーー静寂。
リクは斧を地に突き立て、息を整えた。
セリアとバロムが傍に駆け寄る。
「ごめん、二人とも……心配かけた」
「気にすんな。仲間だろ」
「ええ……助け合うのは当然のことです」
三人は微笑み合う。
血と汗と涙の中に、確かな絆があった。
その時――。
石窟の奥で、鈍い音が響いた。
ゆっくりと、闇の奥の石扉が動き出す。
「……まさか……」
セリアが息を呑む。
そこから吹き出すのは、死の気配。
圧倒的な威圧感が三人を包む。
「骨喰らいの魔王……!」
リクが斧を握り締めた。
セリアが盾を構え、バロムが槌を持ち直す。
三人の戦士が並び立つ。
閃光の斧、賢哲の盾、震天の槌。
それぞれが輝きを放ち、三つの光が交わった。
闇の向こう、魔王の双眼が開く。
それは、死を喰らう終焉の化身。
――骨喰らいの魔王との最終決戦が、今、始まろうとしていた。
光を継ぐ者達 第四章 断罪の因果 完