6月にpixivに投稿したものの投下になります。
いい加減、同じようなネタばっかだから読んだ人も飽きるんじゃ?と思いながら、何も考えずに投下~~~。
せっかく書いたんだし、もったいないもったいない(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)ウンウン♪
いつだったか誰かが、「先代のシェルナーは凄腕の剣士だったらしい」と口にしていた。それからどちらからともなく、剣を使った稽古をしてみようという話になったのは覚えている。
「練習用の剣じゃなくて、真剣を使うじゃと?危ないからやめておきなさい」
あの時の院長の言葉に、素直に従っておけば良かった。
再び目を開けると、もう真っ暗な影しか見えなかった。僕が目を開けた事で安心したのか、影ーーたぶんヒューザだろうーーがほっと息をついたのが分かった。
「後で一緒に、院長に怒られよう。な?」
ヒューザの声が、どこか遠くから聞こえる。
後で?
何気ない言葉なのに、その言葉は不自然なほど空虚に響いた気がした。
「村を出て、親に会いに行くんだろ?」
どうして今、その話が出てくるのだろう?
ぼんやりした頭で考える。
ふと、足元から力が抜けていくような、底知れない恐怖心が僕を襲った。
これで、ここで人生が終わってしまうのだろうか?まだこれからだと思っていたのに!
「ねえ・・・・ヒューザ。僕・・・・もう、死ぬ・・・・の・・・・?」
溢れてきた涙を拭うこともなく、やっとの思いで声を絞り出す。叫んだつもりなのに、掠れてほとんど聞き取れないような声にしかならなかった。
ヒューザがひどくショックを受けた顔をしたのが、気配で分かった。
「バカだな。そんなこと・・・・あるわけっ・・・・!」
じゃあ、どうしてさっきからワナワナと震えているの?なんで今にも泣き出しそうな顔をしているの?
再び言葉を発しようとしたけれど、唇をわずかに震わせるだけで精一杯だ。もう声を出すこともできそうにない。
「おい、起きろよ。こんなんで死ぬお前じゃないだろ?起きろって」
真っ暗になった視界の中で、右手に温もりを感じた。たぶん手を握ってくれてるんだろう。
「俺が人殺しになっちまうだろ!頼むよ、頼むから起きてくれよ!」
悲鳴のような叫び声が辺りに響く。
不思議と、痛みも苦しみも感じない。ついさっきまで全身を覆っていた痛みや息苦しさが、嘘のようにスーッと消えていくのが分かった。
なんだか雲の上を歩いているみたい。ふわふわとした、軽い感覚。
「なあ。目、開けろよ。頼むよ。頼むから・・・・・・」
すがるような声が聞こえた。
誰?僕を起こそうとしているのは誰?
起きたらまた痛みや息苦しさが襲ってきそうだもの。
このまま寝かせてよ。僕はもう、起きたくない。
「・・・・・」
小さな、本当に微かなため息をつくと、僕はそれっきり息をするのを止めた。
「バカ野郎っ!なんであそこで振り返ったりするんだよ?お前がよそ見するから・・・・・・」
誰かが大声で泣き叫んでいる。
両親と暮らしていたあの頃、お母さんに毎日絵本を読んでもらったこと。
たった1人で海の上を何日も漂い、暑さと空腹と喉の渇きで絶望の真っ只中にいたこと。
目が覚めたら孤児院にいて、付いていてくれた少年が水を飲ませてくれたこと。
名前を聞く前に「ヒューザ」と少年が名乗り、僕と兄弟になってくれたこと。
たまに両親の事を思い出したり、海の上を漂っていた時のことを夢に見て、恐くて夜中に目が覚めて泣いてしまったこと。
これまで生きてきた記憶が一瞬のうちに胸をよぎり、弾けた。
ねえヒューザ。どうか自分を責めないで。君はこれから多くの人から非難されて、窮地に立たされるかもしれない。でも、これは事故であって、君1人が悪いわけじゃない。
どうか何があっても前を見て、最後まで歩き続けてほしい。
握られた手の温もりだけは確かに感じながら、僕は心の中で語りかける。
トク、と心臓が最後の鼓動を打ち、止まるのが分かった気がした。
そして、もう何も分からなくなった。
【あとがきみたいなもの】
これ、前に書いた「長い長い夜の間に」の手直しをしようと思った時、参考資料にするつもりで書いたものです。書いたら長くなったので、投稿してみました。