開いた窓から朝陽が差し込んでいる。
体を起こすと窓辺から、朝陽を受けて輝く水平線がどこまでも広がっていた。
「レーンの村、か」
彼は呟くと辺りを見回す。
どうやらこの村の人々は、朝が早いらしい。ベッド脇にある椅子の上でウトウトしている男が1人いる以外は、誰の姿も見当たらない。海に囲まれた村のため、漁にでも出ているのかもしれない。
ウェディの青年からは、「目が覚めた時にレーンの村にいたら、誰の目にも触れないようにレンドアに向かって欲しい」と言われている。
ドアを開けて誰かと鉢合わせてしまうと青年の意志とはそぐわない結果になるため、今のうちに窓から外に出た方が良いだろう。
手早く荷物をまとめると、窓枠に近づき足をかけようとした。
「やっべ、寝ちまった!!今何時だ?」
先程ウトウトしていた男が叫び、辺りの様子を伺っている。
「あ、起きたのか。もう行っちまうのか?」
どうやら自分に話しかけているらしい。
彼が振り向くと、一瞬前まで男に浮かんでいた親しみやすさや友情めいた表情がすっと消えた。
「・・・・・・あいつ、本当に逝っちまったんだな」
「確かヒューザだったね。【彼】と会ったのか?」
「ああ。起こすって約束してたんだ。最後に・・・・・・会えなかったな。・・・・・・挨拶ぐらいしたかったのにな」
ウェディの青年と何かあったらしい。ヒューザは力なく肩を落とした。
「じゃあ、話は早い。悪いが、俺は行くよ。朝になってレーンの村にいたら、誰にも会うなと言われているんでね」
肩を落としたヒューザを尻目に、彼は窓枠に足をかけて外に出る。
懐からルーラストーンを出し、空に掲げようとした時だった。
「――――!」
突然背後から叫ばれた自分の名前に、彼は目を瞬く。声のした方を見ると、ヒューザが窓際に立って自分を見ていた。
「やっぱり同じ名前なんだな」
目を瞬いている彼に向かってヒューザは微笑む。
「ああ、確かに俺は彼と同じ名前だよ。お前の知っている彼じゃなくて、エテーネの村のだけどな」
少し戸惑った様子で、彼はヒューザを見返している。
「なあ。そいつの体、大事にしてやってくれよ。そいつは俺の・・・・・・」
言葉を選んでいるのか、ほんの一瞬黙りこむ。
ややあってから、
「俺の、大事なヤツなんだ」
と、ヒューザはいとおしむように口にした。
「分かったよ」
エテーネの青年は深く頷くとルーラストーンをかざし、レンドアへと飛んで行った。
今回で終わる予定だったのですが、文字数の都合で断念( ;∀;)
次回で本当に終わります。あと1回だけお付き合いください。
♪海に消えた祈り♪
⇒https://www.youtube.com/watch?v=X9NhGuDBcFw
♪男声バージョン♪
→https://www.youtube.com/watch?v=J6VGjGbm3KY
右側で踊っている、アイパッチのお兄様に絵を描いていただいています。