「よ~っし!見てろよ、お前ら。今から俺がカモメを呼ぶからな」
海岸に着くと、マーディが僕と孤児院の子どもたちに向かって声を張り上げました。その間に僕はヒューザの指示で、クラッカーを子どもたちに配っています。箱を開けたら5枚1組で5パック入っていたみたい。1人につき、1パックずつクラッカーを渡していきます。
全員に行き渡ったのを確認したら、
「俺が右手を挙げると、カモメが寄ってくるんだ。いっぱい来るから、近くに来たらクラッカーをちぎって配ってやれよ」
ホントに来るのかなあ??
僕は辺りを見回しましたが、遠くの空に数羽飛んでいるのが見えるぐらい。とても手を挙げただけでカモメが来るなんて思えないんだけど、どうなんだろうか?
不思議に思っているとマーディが海の方を向いて、黙って右手を高く掲げました。すると、
「えっ、嘘!来た!!!」
どこにいたのか分かりませんが、本当にカモメの大群が押し寄せてきました。エサがあるからかもしれないけど、どんどん増えていく増えていく。
靴の上にも平気で乗っかってきたのでコッソリ触ろうとしましたが、触る直前で飛んで逃げられてしまいました。
僕もマネして手を挙げてみたけど、来たかどうかはよく分かりません。
エサがなくなると、ようやくカモメが去って行きました。
「浜にボートは何艘ある?」
「左に3つ、右に4つ~」
「じゃあ”3たす4”はいくつだ?」
「7!」
「ほぉ~、よく数えられたなあ。朝から頭を使うのはイイコトだぞ」
呆然としている僕に構わず、ヒューザが孤児院の子とそんな話をしているのが聞こえてきました。
「お前は昔、すごい早起きだったんだよ」
我が家に戻ると、ヒューザがポツリと言いました。
「慣れない環境だったから、早く目が覚めていただけかもしれないんだけどな。村に来てまだ間もない頃だったか、浜辺で散歩していたからアーシクが”漁の手伝いをしに来た子ども”と勘違いして、いろいろ手伝いをさせた事があったんだよ」
「そうなんだ」
本当は「そんなこともあったね」と言った方が良いのかもしれませんが、僕はレーン君ではないので「そうなんだ」としか返事のしようがありません。
「それでそのままアーシクの親父さんと一緒に漁に出発して、帰りにカモメと遊ぼうとしていたマーディに会ってさ」
「うん」
「口さがないやつもいたんだけどさ。そうやってお前は、村に馴染んでいったんだ」
僕は何と返事をしたら良いのか分からず、そのままヒューザの言葉の続きを待ちました。しばらくそうしていると、
「お前がどこの誰なのかなんて、俺は知らないし興味もない」
ヒューザが無愛想な口調のまま、呟くのが聞こえました
「そう?」
適当に相槌を打っていると、衝撃的な一言が返ってきました。
「ただ、このままアイツとして生きていくんだったら、ほんの欠片だけでもいい。アイツがどんなヤツだったのか、お前に知ってほしかった」
「・・・・僕が別人だって、いつ気づいたの?」
「最初からヘンだと思ってた。じいさんと話しているの聞こえたし」
それだけ言うと、ヒューザは「またな」と言って、帰っていきました。
「今度、孤児院でアルバム見せてよ。僕、レーン君のこともっと聞きたい」
去って行く背中に呼びかけましたが、ちゃんと聞こえたかな?振り返らないで行っちゃった。また会えるよね?
※祖父との思い出を元にして書いてみました。
動画サイトに自作の歌を投稿しています。
ドラクエ10がキッカケで生まれた曲が3つあるので、紹介します。
♪海に消えた祈り♪
⇒https://www.youtube.com/watch?v=X9NhGuDBcFw
去年pixivに書いたウェディの二次創作小説をテーマにしています。右でリュートを弾いているお兄さまにイラストを描いていただいてます。
♪男声バージョン♪
→https://www.youtube.com/watch?v=J6VGjGbm3KY
♪Don't have to Worry♪
⇒https://www.youtube.com/watch?v=ZGqbBRKjufM
コーラス付きバージョン
→https://www.youtube.com/watch?v=46OIaxWQzeg
昔、加入していたチームのサブリーダーさんがモデルになっています。
♪AM00:00~RAGE~♪
⇒https://www.youtube.com/watch?v=cJ-gZb45dko
オンラインゲーム上で「13歳の中学生女の子と、34歳の社会人男性が付き合っている」というテーマの曲です。あるフレンドさんが18歳年下の女の子と(ゲーム内で)付き合っていたという体験談がキッカケで生まれました。