フォンは警備会社に勤めていた。
アストルティア防衛軍の総帥からけたたましい号令がかかった。
「モンスターたちが防衛エリアに向けて進軍中!すぐさま現場に急行せよ」
フォンは思った。
総帥はアホだろう。
アホ毛がびょんびょん生え際からでているアホなんだろう、と。
俺だったらこういう。
「劇場に、我らがアイドル防衛エリアにむかってファンの群れが殺到中!
すぐさま現場に急行してお客様たちの安全と笑いをお届けして、
ショーが終わるまで持ちこたえてほしい!」
と。
総帥はまぁ同じことしか言わないんで、
そんなこと信じる奴は蘇我入鹿と心の中で思いながら、
しかたなく、重い腰を上げて
ファンの安全と笑いを守るために現場に急行したのだった。
一応妖精の剣を帯刀しているが、
武器なんて飾りか虚ろな威でしかない。
偉い人はそれがわからんのです、
とかどこかで聞いたようなセリフを思い出しながら、
道中で牛乳を飲んでいた。
現場に着くと、
ひたすらボケ倒した。
相手は幽霊であったが、お構いなし。
話が通じる奴もいて、
笑ってくれた
そしてボスを倒すこともなく、
無事 丁重に 安全に、ショーを終わりまでご観覧いただいて、
満足したうえでご帰宅いただいた。
俺の笑い要素は、ちょっとまだまだ磨かないとな、とも思ったし、
ひょっとして警備に専念するなら、
ヘヴィーチャージだけの相撲だけでよかったかな、
とちょっと反省したが、
まぁ面白いに越したことはないだろうと思って、
帰りにコーヒー牛乳を飲んで帰った。
戦わずして勝つ、それが理想であるとしみじみ思ったのであった。