令和元年の10月11日は、ほとんどの冒険者にとってありきたりな金曜日に過ぎなかったと思う。数日前からの台風情報に一喜一憂しながら、備蓄を買い求めたり、無関係を決め込んだりする。それでもアストルティアでは変わらず日々の討伐や錬金依頼が発生していたし、ストーリーを進めたり常闇や邪神で戦ったり、カジノに行く人だっていた。ケース・バイ・ケース。 けれど、僕たちはその晩にプレイヤー・イヴェント『ダンディオガ男Vol.11』の本番を控え、まるでライヴ・エイド前のフレディ・マーキュリーになったような -別にデヴィッド・ボウイやポール・ヤング、あるいはエルトン・ジョンでもいいのだけれど- 気持ちでその日を過ごしていた。期待と緊張。こういうのってすごく楽しいと思う。彼らだって同じ気持ちだったに違いない。ザ・フー。ピンク・フロイド。クイーン。ダリル・ホール&ジョン・オーツ。ダンオガ・キャスト。
1985年7月13日のウェンブリースタジアムよりはいくぶん小規模に、それでもアストルティアの冒険者にとっては圧倒的なまでの表示限界に立ちふさがられながら、僕たちの大切なイヴェントは始まった。
ラグビー世界大会におけるニュージーランド代表チームのパフォーマンスを模したオープニング・アクトを好評のうちに(ほとんど見えなかったけれど!)終え、僕も含めたキャストオガ男たちは、アーモンドみたいな形をしたボールをかかえて敵コートに挑むラガーメンのように会場を駆け回った。いいねはトライで、挨拶はキックだ。写真を撮れば得点。それでゲストたちが -きみたちのことだ- 満足できれば僕らチームの勝ちだ。そういう気持ちでイヴェントに参加している。
知っているって? それもそうだね。ありがとう。
ゲストたちはまるでイングヴェイ・マルムスティーンがストラトキャスターを爪弾くような巧みさでドレス・アップ機能を駆使し、色とりどりのおしゃれをして僕たちのイヴェントに参加してくれる。もちろん僕たちキャストだって精いっぱいのおしゃれをするし、そのためにはゴールドを惜しまないこともある。こういうのってすごく素敵なことだと思う。いいねをし、会話をし、写真を撮って時間は過ぎていく。タイム・アフター・タイム。
あるいはきみたちの中にこのイヴェントでフレンドが増えたという人もいるかもしれない。すばらしいことだ。フレンドが増えれば寂しさが少し減る。それだって、僕たちの勝利条件のひとつなんだぜ。
僕はあまり勇気がないからフレンドが増えることは今回はなかった。枠は140人ぶんほど空きがある。誘い受けなのかって? そうかもしれない。オーガだって時にはそういうことをする。でもこういうのって仕方のないことだと思う。やれやれ。
スティーヴィー・ワンダーの先導する『ウィー・アー・ザ・ワールド』でライヴ・エイドがフィナーレを迎えたように、僕たちのダンオガにも終わりは来る。始まってしまった以上、終わらないものはないのだ。やれやれ。キャストもゲストも少しずつ数を減らしてゆき、会場に見える人影や漏れ聞こえてくる白チャットの声は換羽期の水鳥みたいにまばらになっていった。去り際はみんな笑顔だ。よい時間を過ごしたと思ってくれればいいと祈る。A.M.2:50。半裸で唸りを上げるお笑い芸人のような時間帯。人が夢を見る時間まで、僕たちは夢を見せた。
令和元年10月11日の夜に開催されたイヴェントに関する僕のどうでもいい覚書は以上のとおりだ。こういうことだし、楽しかったという感想を目にする度に嬉しくなってしまうから、結果的には僕たちこそイヴェントを一番楽しんでしまったかもしれないね。とても申し訳ないことなのだけれど。
それでも次のダンオガでも僕はキャストとして協力したいと思っているし、色んな人と会話をして写真を撮ったりしたい。フレンドが増えたりしても嬉しい。世の中の大体のことはこういう不純な動機から始まっているんだって、そんなことは周知の事実かもしれないな。
それじゃ、また会おう。僕たちが次にフレディ・マーキュリーになる日に。
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はい村上春樹文体模写終わり。
カロリー使うわこれ!