※ 表現は誇張気味ですが、実話に基づいています
キーンコーンカーンコーン……(授業開始のチャイム音)
生徒諸君、席についているな? 今から授業を始める。
これから話すことは、ドラテンでのバトルにおいて基本中の基本ゆえ、これができないと一流の冒険者とは名乗れないので、しっかり覚えておくように。
さて、先日の10日は何の日だったか分かるか?
「テンの日で、福の神カードが貰える」
「五大陸のどこかにいるNPCより、プレゼントチケットを貰える」
「魔法の迷宮で、通常より期限が短いボスカードが貰える」
「某村のNPCから、メダルフラワーを貰える」
「同じ村の別のNPCに『ダイス』のしぐさをすると、数字に応じてアイテムが貰える」
テンの日に注目が向かってしまうが、毎月10日と25日は邪神の宮殿の更新日でもある。ここで入手できる『戦神のベルト』は、過去のアプデで自分好みの効果をベルトに付与できるようになったので、バトルに熱心な層は通い詰めていると聞く。
裕福な冒険者はリアルマネーとやらでベルトを作るが、一~四獄と天獄を周回すれば、時間は費やすがいずれ理想のベルトが完成する。先生はコツコツと集めている最中だ。
話が逸れた、本題に入ろう。諸君はバトルにおいて『耐性』を意識しているか? LVも特訓もカンストしているし、火力は正義=攻撃こそ最大の防御だから、耐性なんて無問題?
……先生もそう思ってた。今の冒険者の状況下で、昔のコンテンツである邪神一~四獄で、耐性云々ぬかすなんて時代遅れ、と。
これから話す事は先生の実体験だ。この話を教訓にして、アストルティアでの冒険に役立ててほしい。
先生が若かりし頃の写真だ。2014年当時、先生はWiiでプレイしていた。改めて写真を眺めると、ゲーム機種の表現力の進化を感じる一枚でもあるな。
隣のウェディ女性は、先生が所属するチームのリーダー兼リアフレのMさんだ。長い付き合いではあるが、所謂『相方』ではない。彼女にはリアルで素敵なパートナーが存在する。
今月のテンの日、チームメンバーが数名ログインしていた。今回の某所の週課に『邪神の宮殿の攻略』があった事を思い出した先生は、メンバーに声をかけた。その際に参加表明をしたのがMさんだった。
魚同士で邪神デートを楽しもうと、彼女を誘って現地に向かった。傍目から見れば馬鹿ップルであろう。
「今回の相手って、何に気を付ければ良いの?」
「一番は魅了かな」
先生の一族(3rdと4thキャラ)で既にクリアしていたので、相手の手の内は分かっていた。LVカンストして特訓モードに移行中の先生は、特訓ポイント欲しさにレンジャーを選択。顔アクセがダークアイではなかったが、弓スキル200だし初手で弓ポンをまけば大丈夫だろう、とこの時は思っていた。
そう、この時までは。
前置きが長くなったので、結論から言おう。初手の弓ポンが発動するより早く、相手の魅了攻撃がパーティーを襲った。先生も巻き込まれた1人だった。
中の人曰く、
「不遜な人間を罰するアポロン神が如く、無慈悲で正確な矢の一撃が味方の命を次々と奪っていった」
こちらのパーティーは自分以外死亡、相手側の1名に止めを刺し、8人同盟は生き残った者も瀕死状態と悲惨な有り様だった。パーティーを組んだMさんも無事ではいられず、最愛の男の手で命を絶たれたそうだ。
力を驕る者はその力に復讐されると。
現場の混乱はやがて収まり、正気に戻った先生は次々とザオラルを唱えたのだ。戦線復帰した仲間たちが攻撃に転じ、一獄のボスを撃破するまでにかかった時間は、なんと3分半。
生徒諸君、これはテストに出るぞ。
【耐性大事、特に『魅了』大事!】(黒板に大きく書きながら)
時間が来たので、今日の授業はここまで。
キーンコーンカーンコーン……(授業終了のチャイム音)