やはり私は長旅になると決まって不運に見舞われるようだ。一回目は初恋の人を失い、二回目はなかなかの苦労が水の泡になり、三回目はおサイフを落とし宿に泊まれず野宿。こう見ると結構酷い。今回に関してはおサイフを落とすだけで済めば良いのだが、前回前々回の結果を見るに碌なことは起こらないだろう。
まあそうだとしても仕事は仕事である。依頼人のご期待に添えてこその自由業だ。やることはやらねば。
さあこの広いカミハルムイで、しらみつぶしに廃館をさがそう!!となるわけもない。ひとまず街ゆく人達から情報を集めよう。
というか例の白ローブ、その廃館の場所をもう少し詳しく教えてくれても良かったのではないだろうか?
そうしてくれたならば余計な苦労をしないで済んだはずである。 愚痴をこぼすのは良くない。うん。
情報を集めるにつれて、ホントにカミハルムイの外れにあることが分かった。それはもう、ぱっと見ただけでは分からないくらいには見つけにくい場所にあるらしい。それと、どうやら怪談が語られているようである。人喰いが出るとか一度入ったら出られないとか
恐ろしい悪霊が封じられているとか青い化け物がでるとか……どれも事実無根の噂話にすぎないだろう。
こういう怖い設定が付くのは廃館あるあるである。
そんな噂話よりも急に蜘蛛や(自主規制)がワッと
飛んでくる方が怖い。よっぽど。
藪をかき分け、ようやく例の廃館に辿り着いた。
なるほど、確かに気味が悪い。これなら怖い噂話が
流れても不思議ではない。カミハルムイの近くなのに洋風の外装で異質だ。今にも雷が鳴ってコウモリが飛んできそうだ。
しかし藪の中で迷子になっていたのか、また暗くなっていた。また野宿である。
湿った地面の感触を肌で感じながら、私は眠った。