どれくらいの間気を失っていたのだろうか。館の中はあまり光が入ってこないため、朝か夜かも分からない。ただ床に突き刺さっているという事しか把握できなかった。何とも滑稽である。
しかし滑稽だと思った直後、右足にかなりの痛みが走った。何事かと床に空いた穴から這い出て確認してみると、ぽつりぽつりと一対の赤い点がいくつも出来ていた。なるほど、毒虫にやられたようである。よっぽどこの館を燃やしてやりたいところだが、ギリギリアレルギー反応を起こして死んでいないので許してやることにしよう。
探索を再開するため立ち上がろうとしたが、まあ思った通り右足に力が入らない。情けなさすぎる。悪霊なんかとの死闘の末右足を負傷したならまだマシだが、なんなら名誉の負傷とも言えるというのに、虫にやられたのである。毒虫を侮るなと言いたい気持ちも非常によく分かるが、それでも何か嫌じゃないですか?虫に片足持ってかれたんですよ?泣きますよ?
何とか立ち上がることができたが、壁伝いにしか歩けそうにない。探索の効率がだだ下がりだ。もう勘弁してほしい。いつになったら依頼の剣を持ち帰ることができるのだろうか。そもそも無いなんてことは流石にないと思いたい。もしホントに冷やかしだったなら、フライパン辺りの鈍器でシンプルにはたき飛ばしてしまうことだろう…。