朝 病室から出て
いつもの人気のないフロアの
イスに座ると
その人はやって来て こう言う
おはようございます
今日もお互い死に損ないましたね
そして俺は こう返す
あいさつとして
それは どうなんだと
リリア「マンガとかなら
死んだら楽になれると言いますが
本当でしょうか?」
シウス「わからないよ
死んだ後に伝えに来た人は居ない
もしかしたら
とんでもなく苦しいのかもしれない」
リリア「それは嫌ですね」
この人と話していたら
こんな問いもあいさつになるのだろうか
シウス「リリアは
なんて名前の障害名なんだ?」
リリア「さあ?
正確にはわかりません」
シウス「子供の頃から障害者なんだろ?
そんな つきあいの長い障害
名前くらい」
担当医が代わる度に
障害名が変わりますから
シウス「(・・・)」
リリア「正確にはわかりません」
シウス「・・・そこまで
同じじゃなくていいよ」
リリア「え?」
シウス「朝だよ
リリアは何をして過ごす?」
リリア「「フフ」
シウス「何がおかしい?」
リリア「わかってるようで
わかりませんよね自分って
貴方も障害者でしょ?」
リリア「”何をして過ごす?”
それを言いますか?」
シウス「・・・あ」
失言だった
障害者である俺達が何をして過ごす?
リリア「朝が来て夜が来るだけですよ?」
シウス「・・・ごめん」
リリア「時間だけは有り余るほどありますから
いじわるして貴方を困らせるのも
ヒマな時間を持て余すより
楽しいかもしれませんね」
シウス「・・・だから・・ごめんって」
リリア「何を言ってるんですか?
私は感謝してるんですよ
こうやって話す相手が居るだけで
楽しいですから」
シウス「何も無いよりは」
何かがある
シウス「え?」
リリア「最近
そんな気がするんですけどね」
シウス「それって?」
リリア「もう検査の時間なんです
少し行ってきますね」
シウス「がんばって」
リリア「がんばりようがないんですけどね」
検査が終わって出てくる
シウス「どうだった?」
リリア「・・・ストーカーですか?」
シウス「毎朝
不気味な挨拶してくる
君に言われたくないし」
リリア「ズレてる私の感覚で言うと
普通でした」
シウス「悪かったか?」
リリア「どうして?」
シウス「”いつも体調が悪いのが普通”
だからな俺達は」
リリア「(・・・同じだ)」
リリア「・・・」
リリア「少し 中庭に出ませんか?」
中庭
リリア「暖かくなりましたね
もうすぐ春でしょうか?」
シウス「そうだね
そして夏がやってきて
秋になって冬になって
また春がやってくるだけだ」
リリア「夢が無いね?」
シウス「夢なんて持つだけ悲しいだろ?
季節が巡っても
障害者である俺達が何ができる?」
リリア「同じだね 考える事」
シウスの手をにぎるリリア
リリア「教えてください
シウスは
どんな子供でしたか?