ベッドに横たわり
天上を見上げ物思いに耽る
自宅 夜
文化祭の出し物だろ?
「・・・私
文化祭って言ったっけ?」
考える
「なんで わかった」
考える
「もしかして
私を知ってる人?」
考える
「学校の人だったりする?」
だけど
「あんな人
見たことがない」
スマホを出し文字を打つ
「貴方は誰?」
そこまで打ち思いとどまる
「初めての連絡が
これじゃ感じ悪い
あれ・・彼からの連絡?
明日の夜 会えないかって」
次の日の夜
喫茶店
「・・・恋歌しか書けないんだ」
そうシスに打ち明ける
「(そういえば
セッションしたときも
河原で聞いた歌も
そうだったな)」
恋歌 以外に歌詞書いたことがないの?
そう たずねて出てきたのが
ただ 寝ている何もできない
普通の人は生活しているのに
なんで僕だけ苦しまなきゃいけない?
普通の人は笑って居るのに
六畳一間しか世界を知らない
ねえ 教えてよ
「世界は広いですか?」
みんなの知ってる普通がわからなくて
どうすれば普通になれますか?
僕は知りたいんだ 普通の世界を
こんな壊れた世界から抜け出したい
絵空事のような優しい世界を
夢 見たっていいでしょ?
「・・・こんなのしか」
「妙にリアルティあるけど
文化祭で歌うのは ちょっと・・・」
「・・・だよね」
「でも恋歌 良いじゃない
他に どんなの書いてるの?」
「それわね」
歌詞の話で盛り上げる
「すごいね
なんでそんなに言葉が出てくるの?」
「なんとなくというか
感覚というか
そんな感じでしか書いてない」
「経験から書いて居るとか?」
「恋をしたことがない」
「・・・え?」
「そんな俺が恋歌なんて
書いていいのか わからないし
今日会ったのは
他の人に頼んだ方がって」
私は好きだよ
「私は好きだよ
貴方の歌詞」
「どこが?」
「この歌詞だって
だんだん君の色した私の心
この瞬間が特別だね
こんな想い どうかしている
そう 私は君と
どうかしたいんだ
「恋をしたことが無い人が
書いた歌詞には思えないもん
私も好きな人と
どうかしたいかも
「そう思ってくれるなら
うれしいよ」
「貴方が私と同じ高校の人なら
よいのに」
「・・・」
「ごめん ちょっと
席外すね」
ひとり席に居て
物思いに耽る彼
「シス?
君は俺に誰を見てるの?
帰り道
「本当に1曲目は
あれでいいのか?」
「うん 最高の歌詞じゃん」
「文化祭 うまくいくといいな」
「貴方の歌詞のウデにも
かかってるんだからね?」
「なんとかするよ」
「アテにしている」
そこで別れた二人
彼の書いてくれた歌詞を読む
「これが恋をしたことがない人が
書いた歌詞・・・
・・・これ全部 想像なの?
・・・やばくない」
夜空の月を見上げ
つぶやくシス
「貴方が
貴方が恋をしたら
この歌詞は
どうなっちゃうんだろうね