昼に目が覚めてドラクエ10を起動する
インすると同時にフレチャが飛んでくる
「あそぼー!」
「日替わり討伐だけさせてくれないかな?」
「ダメー!」
日替わりは後回しにするしかなさそうだ
チェルと同じ場所に出る
会ったからと言って
お互い口を開くわけでもない
ただ同じ空間に二人過ごして居る
最初は この感覚に戸惑ったが
自然と慣れて来た
この感じをチェルは悪く思ってるわけでは
ないみたいだ
僕は この状況に助かっていた
起きたばかりで睡眠薬が抜けきっていない身体
この状態で急にチャットで語り合うのも酷だ
この時間は ありがたかった
急にチェルは喋り出す
「・・・嫌な子供だと
思わないでほしいの」
急に どうしたのだろう?
言葉を続けたチェル
仕事は どうしたの?
昼の13時
こんな時間に遊んでるんだ
聞かれても おかしくない
いつか聞かれるだろうと思って居た言葉
だから何て答えればいいか
準備はしていた
「精神障害者なんだ
働ける身体の状態ではない」
それを聞き黙るチェル
少しの沈黙の中でチェルが漏らした言葉が
「・・・やっぱりだったんだね」
やっぱりとは?
気づかれていたのか?
だが精神障害者なんて的を射た言葉
できるはずがない
「私が黙っててヴュアさんも黙ってたから
これが ちょうどいいのかなって」
その言葉で すべてがわかった
「チェルも?」
「・・・うん
・・・精神障害者なんだ
インしてお互い黙ってる時間
チェルが黙って居たのは
僕と同じ
睡眠薬の薬が抜けるまで
神経が消耗していたから
でも一緒に居たいから
はやく独りじゃないって
感じたかったから
インしてくる僕を待って
毎日 声をかけていたらしい
「お互い 普通じゃないね」
悲しそうに そう言っていた
僕は精神障害者で仕事もできない
チェルも精神障害者で
おそらく学校にも行ける
体力すら無いのだろう
その痛みは痛いほどわかる
僕も同じ理由で
学校にすら行けなかったからだ
「この障害 治るのかな?」
言葉がでない
真実を突きつけた現実に
彼女は耐えられるのだろうか?
「ねえ ヴュアさん?
治ると思う?」
少なくとも僕は
10年以上
この苦しみが続いている
何て答えればいい?
何が正解の答えなんだ?
「いつの日か治るかもしれない」
「ウソがヘタですよね?」
答える時の一瞬の戸惑いの間が
彼女に気休めのウソだと
わからせてしまった
「・・・なんで・・私は
普通じゃないのかな?」
涙交じりの声で震えながら
そう言うチェル
「・・・どうして私は
普通になれなかったのかな」
同じ人間が ここに居る
「・・・」
「君と同じ苦しみを持った人間が
君の傍に居る」
「・・・」
「全員が同じ重さの症状ではない
だから すべて
わかってあげられないかもだけど
僕が1番
君を わかってあげられる
「・・・そっか」
「お互い傷を舐め合おうよ?
こんな平日の昼に なに遊んでるんだよ
みたいな生き方でも
僕は わかってあげられるから」
「・・・私も」
少し間が空き言葉を続けた
「私もヴュアさんと同じ精神障害者だよ?
だから 私も
・・・貴方を
わかってあげられるかな?
「きっとね」
いつしか
チェルとの時間が
精神障害者で何もない僕の
生きる支えになっていた
「・・・行ってみたいな学校に」
「・・・」
「・・・私は・・行けると思う?」
「じゃあ 行ってみようか?」
「え?」
「・・・
学園に