なんですか
最悪なケースって!?
「・・・
・・・自殺することだよ
「・・・自殺」
「本当に死にたくて死にたくて
仕方がないんだよ!
こんな苦しいのなら
呪われた身体で生きるくらいなら
死んで苦しみも悲しみも
消したいんだよ!
でも なんで
そうしないのか わかるか!?」
「・・・」
「・・・あなたたちが
親が悲しむからだろうが!?
「・・・」
「だから死なないんだよ
自分が死ぬことで
親を悲しませたくないんだよ!」
「・・・」
「”1日中 遊んでる?”
”昔は あんな子じゃなかった?”
死にたくて我慢して仕方ないのに
よく そんな事が言えるな!?
とっくに死んでても おかしくないのに
生きててくれてありがとうくらい
言ってあげたことがあるのか!?
「・・・」
黙り切って何も言わない
チェルの母
「今できることは
どうしようもないことを
どうにかしようと足掻くよりも
最悪なケースにならないよう
回避し続けるしかないんだよ
そしたら いつか
身体に相性の良い薬や医者が
見つかるかもしれない
ある日 突然 治ってるかもしれない
今は 理解してあげて
支えてあげるしかないんだ」
「・・・最悪なケースを
回避すること
私は・・何も わかって
なかったのですね」
チェルの母は僕にした無礼を詫び
自分の娘を理解しようとしなかった自分を
諭してくれたことに礼を言い
ログアウトした
次の日の昼
「こんにちわ」
いつものインした瞬間の
チェルのフレチャ
これが いつもの挨拶だ
「聞いてたよ
ヴュアが お母さんに
説教してたとこ」
「見てるんじゃないよ?」
「かっこよかったよ?」
「かっこいいとか悪いとか
そういう話じゃないだろ?」
「最悪なケースを回避することか」
少し考え事をして口を開く
「私 ヴュアと出逢った あの日ね
死のうと思ってたんだ
「え?」
「ありったけのゴールド
カジノで使い切って
人生を終えようと思ってたの
でも人生って予定通りに行かないね
ヴュアと出逢っちゃった
「・・・」
「出逢ってくれてありがとう
そうじゃなかったら
私は自殺してたよ」
「何が起こるか
わからないな人生って」
「本当だよ」
二人 ゆったりした時間を過ごす
「私って・・間違ってないよね?」
昼から深夜3時までドラクエ10を
プレイしている
一般的に見れば それは
間違って居るんだろう
「・・・間違ってないよね?」
でも 僕らは
精神障害者だ
普通じゃない
「必死に苦しいのを耐えているんだろ?
ドラクエ10って言う麻酔薬を使って
痛みを ごかましているんだろ?」
僕らは そんなことしかできない
「誰が おかしいって非難しても
僕だけは わかってやる
立派だよ ちゃんと生きて居る
チェルは立派な強い子だよ」
「うぅ・・うああああぁあああ」
泣き出したチェル
やっと わかってくれる人が居た
親だって わかってくれなかったのに
それに安堵し
心の底からチェルは泣いた
あれからチェルの母親は
チェルに理解を示すようになったらしい
その母に説得されて
父親も態度を改めたようだ
精神障害者にとって
家族が わかってくれるか どうかで
まったく違う
やっとチェルは少しくらいは救われたんだ
もう願うしかないんだよ
僕らは精神が壊れていて
何もできないんだ
疲れ切っている今 この時は
最悪なケースだけを回避して
動けるようになったら
わずかでも足掻けるようになったら
足掻いて
後は奇跡を信じるしかない
僕らには
それくらいしかできないんだから
精神障害者になって
1つでも良い事があるかって?
あると思って居るのか?
あ・・1つだけあったか
普通に生きて居たらできない
出逢いがあった
「こんにちわヴュア」
君と出逢えたこと