今日も泊まっていくから
ヴュアの自宅
「なに言ってるんだ!?」
「だってヴュアと居ると
楽しいんだも~ん」
「・・・」
悪い気はしない言葉だが
そういう問題ではない
「男の家に女の子が泊まるなんて
昨日はやむを得ず止めたけど
チェルの お母さんは
納得してるのか!?」
「お母さんは長期出張」
「え?」
「だからヴュアの家に
私を預かってほしいって」
「よく知らん男に
そんな簡単に」
「言ったでしょ?
お母さんはヴュアを
敬愛してるって
ヴュアに怒られた あの日からね」
・・・もうド〇を叱るのはやめよう
僕の両親もいまだに帰る気配がない
ということは しばらく この家で
チェルと二人で暮らすのか?
お金は どうするんだ?と思ったが
両親に将来のために使えと言われ
貯めて居た障害基礎年金がある
1年は何もせず生活できるだろう
・・・ちがう
そこが問題なのではない
しばらく 女の子と二人っきりで
生活することになるとは
「ず~っとドラクエしてようね♪?」
・・・そういう事じゃないんだよ
チェルは いいのか?
僕と二人っきりの生活なんて
「悪いわね」
そのチェルの母の言葉を思い出した
自宅に届けられたチェルの大量の荷物
やはりだ
生活用品が山ほど積まれてたし
チェルを僕の家に預けることは
決定してたらしい
・・・ということは この荷物に
入っている物は
・・・やはりと思ったのなら
やめておけば良かった
「私の衣服や下着を漁って
どうしたのかな?」
ちがう
チェルの母の あの言葉の真相を
確かめたかっただけだ
「で・・私の下着を・・・?」
「うわぁ!」
「どれが好み?♪」
「そういうこと聞くんじゃない!」
ダメだ
からかい尽くされる毎日しか
思い浮かばないぞ
もう あきらめた
チェルと一緒にドラクエを
睡眠障害で まったく眠くならない
僕たちは眠れる その時まで
ドラクエをし続け
ようやく眠りがやってきたときに
睡眠薬を飲んで寝ることにした
翌昼
「あれ?」
良い匂いがする
そういえば お腹が空いたな
ヴュアがお昼ご飯を作ってくれてるのかな?
え・・お昼ご飯!?
「なに やってるのヴュア!?」
鬼気迫る表情で台所に行き
ヴュアに迫るチェル
そう
睡眠薬が抜けきっていない
お昼での労働は
精神障害者である私たちにとって
フラフラで倒れそうな状態で
食事を作ってくれてるってことだ
「ヴュア!?」
「大丈夫だチェル
今日は体調が悪い中でも
比較的軽い方だから
心配するな」
私たちの体調は毎日悪い
その悪さの中で
症状が軽い時と重い時がある
「・・・もう
そんな無茶しないで?」
「大好きなたんぱく質と
食物繊維とビタミンと
発酵食品が摂取できる
昼飯つくったから
これで満足できるだろ?」
少しフラつきながら
倒れそうなヴュアを
身体ごと支えた
「もう こんなムチャしないで?
添加物だらけの安い弁当でも
いいからさ」
「わかったよ 無茶はしない」
こうしてチェルとの
二人っきりの生活が始まった
昼は買い置きの
幸いにも無添加の調理した
肉や魚や野菜料理が
近くのスーパーにあったから
それを利用した
食事をして皿洗い 洗濯物をして
スーパーに食べる物
生活必需品を買い出しに行って
ドラクエをプレイして
風呂に入って
眠くなるまでドラクエをする
この暮らしをチェルとしている
・・・おかしいな
こんな生活できるはずなかったのに
精神障害者である僕たちは
いつも身体の調子が悪い
言ってみれば
常時 軽い風邪を引いてるようなものだ
なのに普通の生活ができている
君なのか?
君が僕を変えてくれたのかチェル?