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砂漠のじごくのハサミ

ノノ

[ノノ]

キャラID
: TQ400-888
種 族
: ウェディ
性 別
: 男
職 業
: デスマスター
レベル
: 124

ライブカメラ画像

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ノノの冒険日誌

2014-06-20 10:01:09.0 2014-06-20 10:07:42.0テーマ:その他

ゆうはん。(仮)22 ~勇者と魔王が、はんぶんこ。~


  第3章 その1

 深い森の中だった。
 なぜ自分がそんなところにいるのか、分からなかった。
 気が付いたときには、すでにそこにいたのだ。
 ふと、周りを見渡してみる。
「…………」
 深く、暗い森だ。頭上を覆い尽くす木々はどれも巨大で背が高く、陽の光を遮っていて、辺りは薄暗い。足元には、むき出しの大きな根。不気味な植物も、そこらじゅうに生い茂っている。
「てか、そんなことよりも……」
 かれは おもった!
 ――だれだっけ? だれ……なんだ? わからん、思い出せない。わからない、わからないよぉ!
「……じ、自分が、何者か、思い出せぇぇぇぇんッ!」
 と。
 ぎゃぁ! ぎゃぁ! ぎゃーぁ!
 彼の叫びに呼応するかのように一斉に咆哮が上がった。
「ひぃッ!」
 木々の遥か上の方からだ。何か鳥獣らしき鳴き声だとは思うが、いささか尋常ではない。
「うぅぅ、怖いよぉ、なんなんだよぅ、もぉ……」
 このままジッとしていても仕方がないし、何よりも身の危険を察したのか、彼は取り敢えず、歩き始める。相変わらず頭上では、ぎゃぁぎゃぁと不気味な鳴き声が飛び交っていたが。
「よし、落ち着け。一端、落ち着こう。ありゃきっと、ちょっと個性的で野生的な太めのカラスさん達だ。そうだよ、なにも怖がることなんて、ないじゃないか」
 と、独り言ちしながら、どうにか前に進む彼だった。声に出して言ってないと、不安と恐怖で押しつぶされそうらしい。
「いいじゃん森、素敵じゃん? ね、目に良いよ森林、快適じゃん? ほら、あれだよ、立ち込めてる白っぽいこの空気感ってのは、マイナスイオなんとかっていうヤツだろ? いいじゃん、いいじゃん、すげぇじゃん。なんつーの、こう……自然な感じで? まぢネイチャーって感じ? もう、ネイチャーをミクスチャーすりゃフューチャーもバッチリってなもんよ! なぁ? だろ、だろぉ? ふははははーっ!」
 だが しかし!
 そのほうこうには だれもいない!
「………………うぉぉぉぉぃ……、なんなんだよぅ、もぉ……こころぼぞいよぉぅ……」
 ぎゃーぁ! ぎゃーぁ! ぎゃーぉぅ!
 心なしか、頭上の鳥獣たちが追って来ているような……、しかも、ちょっと、てか、確実に近づいてきているような気が……。
「うん、いる。ひー、ふー……三匹いるね、あれは。絶対こっち、見てるよ、うん――、

A「ちょ、おまッ、先に行けよ。はやくついばめよッ」
B「ええー、なんでオレからなんだよ、見つけたのオマエだろ?」
C「まぢかよ、毒見役~ぅ? おいおい勘弁してくれよ~」
A・B・C「「「……じゃ、せ~の、で、行きますか……?」」」

 ――って話してるに違いないよぉぉぉ……ッ!」

 ぎゃぎゃ! ぎゃぎゃー! ぎゃぎゃぎゃーぉ!
「うっわ! まぢかよッ!」
 なんと、空中で旋回していた三体の影が、再び咆哮しつつ、こちらに急降下してくるではないか!
 慌てて駈け出そうとするが……?
 しかし にげられない!
 彼は木の根に足を取られ、顔面から転んでしまった。
 恐る恐る振り返り、迫りくる奴らの姿を、見る!
「おい……こりゃぁカラスなんて生易しいもんなんかじゃないぜ」
 確かに、全身は黒だ。大きな翼と鋭い鉤爪。だが、その顔面は赤く猿のようで、さらには角を生やしていた。しかも、デカい。
「あれは、あれは…………、モンスターぢゃんッ!」
 それまでお互いを牽制し合っていたような三体だったが、彼の叫びを合図に一斉に襲い掛かって来た。逃げる隙もない。音も立てず目の前いっぱいに黒一色が広がる!
「うあああ! 助けてぇえええッ!」
 堪らずに悲鳴が上がる。咄嗟に両腕で顔面を防ぐ……、

 ――その時、彼の身体を風が吹き抜けた。

 正確には、誰かが自分の横を通り過ぎた、だ。
 そして、鈍い衝撃音と、ぎゃぁぉん! という不快な悲鳴。ばさばさばさばさッと幾つかの羽ばたきが聞こえた。
 痛みはひとつも無かった。強張らせていた全身を解き、ぎゅっと閉ざしていたその目を、ゆっくりと開く。
 彼は、見た――。

「なにをしているのです? こんなところにいては、いのちがいくつあっても足りませんよ?」

 彼女が言った。
 剣を構えた、短髪の……少女がそこにいたのだ。
 一体のモンスターが、彼女の足元で悶え、残り二体がそれを取り囲んでいる。
「き……、きみは、……だれ……?」
 戸惑いながらも、彼は訪ねた。
 そして。
「名乗るほどではありません。ただ、人は皆、私のことを、――勇者、と呼びますが」
「ゆうしゃ……」

 彼は、自分が何者であるか、思い出せないでいた。
 ただ、その少女が言った“勇者”という言葉が、とても懐かしく思えた。


 つづく。

※この物語はフィクションです。
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