エクロムの冒険日誌

その頃二人は･･･ミアスの母の航空機の中にいた。
「ふー･･･、今日もしつこいな･･･」
「助かったよ、リゲルの怨力があったから。」
「あいつが僕の怨力を知らなくて良かったよ。
　知ってたとしたら対策とられちゃうしね。」
「すごいよねー。闇で壁を造り、闇クジラで機内まで運べるなんて。」
「ふ、あいつも急に僕らが消えて驚いただろぅ」
「勘弁してよリゲルくん。機内でいきなり黒いクジラが現れたかと思ったら二人が
　出てきて､おまけに[すぐ出発して！]と言われるもんだから。」
「すみませんねぇ。」
航空機を操縦するミアスの母､マレンはブツブツ文句を言い続ける･･･
そう。僕の怨力は[闇の使者]。闇を硬化して僕たちを覆ったあと、クジラで僕たちを
食べ、この航空機まで運んだのだ。
そしてその隣にいるのはミアス。僕の幼なじみで同じ学園に通う同級生である。
どうして男が追いかけるのかというと、
「私が説明するわ。」
ミアスの母マレンは言う。
「私らの一族､リンガル家は祖先から､天使の血をひく一族と称されているの。
　その血は大地､海､空､･･･至るところに眠る神獣を呼び起こすと言われる。
　それを狙って色々な人が狙ってくるの。･･･おまけに今年は美少女が生まれ
　ちゃって、婚約目当てで来る男もいるけどね･･･。」
「やだー、美少女なんて。」
 (仕方ないだろ･･･)
「ま、僕も幼なじみだからね･･･。危険な友達を放っておけない。」
「いつも感謝してるわ。」
「いえいえ。」
僕らを乗せた航空機はステルスモードで青い空を切るように走る。
そして夕刻。航空機は廃墟都市の上空に停まり、ゆっくりと草原に降りる。
もう太陽が沈む。
「じゃ、これで｡またね。」
僕を降ろして、航空機はまた沈む太陽の方に飛んでいった。
草原の回りには崩れた建物や割れた道路が広がる。
鹿や猪が優雅に暮らす自然と化しているが･･･
たまに群れが見えないときがある。
そんな動物たちを眺めたあと、僕は近くの森へと向かった。
(天使の血を引く一族も大変だな。)
もう空の半分が灰色の雲に覆われ､森も暗くなりかけた。
僕がふらりと歩き着く先には村。もう各所に灯火が見える。
(学園行きづめで疲れた･･･休みたいな･･･)
そうため息をつき、一本の木に手を伸ばす。　　　　　　　　　　続