辞書や百科事典でインフレの定義を調べると概ね次の現象を指すことになっています。
・物価水準が継続的に上昇する
・貨幣価値が継続的に低下する
現実世界ではこの2つは一致しますがゲームでは必ずしも一致しません。
何故なら、「間違いだらけのアストルティア経済学1」で説明したように、運営が効用を調整しているからです。
通貨流通量の影響を見るため「間違いだらけのアストルティア経済学2」では物価水準の観点でのみ検証してインフレは生じていないと説明しました。
しかし、運営による効用調整の影響を受ける貨幣価値は継続的に低下しており、この観点ではインフレだと言えます。
1.物価水準の継続的上昇は見られない
2.戦闘面で見た貨幣価値の継続的低下は見られる
「間違いだらけのアストルティア経済学2」で検証した通り、一部商品は高騰しているものの、物価水準の継続的上昇は見られません。
これは、一部商品の価格決定プロセスが他の商品の価格決定プロセスとは違うことを示しています。
高騰している商品はいずれも寡占市場であり、市場原理と独占の中間的な性質となり、売り手の意向が価格に大きく影響しています。
売り手の意向は、欲する利益と製造コストで決まります。
以前にも説明した通り、レンダーヒルズなどのバザー外高額商品の発売は、売り手が欲する利益を押し上げます。
また、新種の装備は、必要とする材料の数量が増えており、製造コストも上がります。
結果、新種の装備は、以前の装備よりも高くなります。
型落ち装備は需要以上に供給が減少して、独占的性質が強くなって価格が上昇します。
新種装備追加に併せて、敵を強くして効用を下げる調整が入るため、一定の効用を維持するための装備価格は高くなります。
結果、戦闘面で見た貨幣価値は低下します。
これが、新種装備追加や新しい敵の追加の度に起きるので、戦闘面で見た貨幣価値は継続的に低下していきます。
以上の通り貨幣価値の観点ではインフレと言えますが、物価水準の継続的上昇は見られないので、これは通貨流通量とは無関係です。
貨幣価値の観点でのインフレは、バザー外高額商品の追加、新種の装備の追加(必要材料数の増を含む)、敵の強さの調整等によって生じている現象です。
物価水準が上昇せずに貨幣価値が低下すれば、寡占商品を扱わないプレイヤーにとっては、収入が増えないのに支出が増えることになります。
これは多数のプレイヤーの効用を下げており、経済的にはマイナス効果になります。
これを防ぐ唯一の手段は、職人・バザーのシステムを抜本的に改めることです。
職人・バザーのシステムを維持する限り、アストルティアの経済はどんどん悪化していきます。
いずれにせよ、「間違いだらけのアストルティア経済学2」で検証した通り、通貨流通量が継続的に増えているにも関わらず、それを原因とするインフレは発生していません。
よって、「間違いだらけのアストルティア経済学3」で書いた通り、『MMORPGは、従来のRPGよりも、システムがちゃんとゴールドを消さなければならない』が間違いであることは明らか…という結論は変わりません。
間違いだらけのアストルティア経済学1
http://hiroba.dqx.jp/sc/diary/193798030194/view/5127034/
間違いだらけのアストルティア経済学2
http://hiroba.dqx.jp/sc/diary/193798030194/view/5127075/
間違いだらけのアストルティア経済学3
http://hiroba.dqx.jp/sc/diary/193798030194/view/5127828/
間違いだらけのアストルティア経済学4
http://hiroba.dqx.jp/sc/diary/193798030194/view/5129948/