男は神に祈りを捧げていた。
こうなることは覚悟していたはずだった、妻が妊娠したときから・・・。
それでも男は神にすがるしか道はなかった、今までも凄惨な光景は目にしてきたがまさか自分達の身に降りかかることになろとは。
上の子はもしもの時のために教会に預けた、もうすぐ妹ができるのだとあんなに喜んでいたのに申し訳ないと思う、しかしこれから起こる悲劇をどうして息子に見せることができようか。
部屋は静寂に包まれていた、家には男の他に妻と産まれたばかりの赤ん坊がいるだけだ、部屋は明かりが灯っておらず月の光だけが煌々と窓を照らすだけだ。
そうだ、あの忌々しい満月の晩だ!この日がこなければいいと何度思ったことか!しかし無常にも満月の晩は訪れてしまった、男の願いは神には届かない。
月夜に照らされた部屋は静寂を保ったままだ、もしかしたらこのままずっと何事もなく終わってくれるのではないか?そんな小さな望みを男が持ち始めたとき、
おぎゃ~おぎゃぁ!
赤ん坊が突然泣き声を上げた。
妻が赤ん坊を抱き上げようとベッドに近づこうとしてあわてて男が引き止める。
「危ないっ!近づくんじゃないっ!!」
男が叫んだ瞬間に赤ん坊は奇怪なうめき声を上げ始めた。
ぐげげっぐじゅる げるげる ぐちゃっごぼごぼっ
それまで赤ん坊だったモノが奇怪な音を発しながら異形のモノに変わってゆく・・・。男と妻はただ震えながらその光景を見ていることしかできなかった。
先ほどまで赤ん坊だったモノは今や口が耳まで裂け赤黒く染まり尾と羽の生えた魔物に姿を変えてしまった。
キシャアァァァーーー!
待望の我が子だったはずなのに!男は自分達にこんな試練を与える神を呪った。
ガッシャアァァン!
赤ん坊の成れの果ては勢いよく窓をぶち破り外へと飛び出し月夜の照らす闇へと消えていった・・・。
ハイ、これはコスタール城の防具屋夫妻をホラータッチに書いた一幕であります(イマイチ怖くなかったって?ボクの文才ではこれが限界w)
この国では5年前から生後間もない子供が満月の夜になると呪いにより魔物に姿を変え闇に閉ざされた灯台へと消えてしまうといった出来事が起こっております。当然この国の人たちは怖くて子供なんて作れません、今まで魔物による侵略で町や村は襲われましたが、子供を作れなくして徐々に国の衰退を図るというなんとも気の長い方法は長生きの魔族ならではの発想ですね。
超少子化の行く末といったところでしょうか。
DQのゆる~いタッチだからあんまり怖さも感じませんが、内容的には十分ホラーです。カプ○ン並みの描写だったら超怖いと思います。
バラモス様のハラワタを喰らうのだって劇画タッチにしたら相当なR指定ものですよ、想像してみてください・・・。
(続く)