「ごめんくださ~い!」
あたりに野太い声が響いた。
「は~い。今の時間お昼休みですよぉ~。」
うなは気だるそうに対応した。
「いえ、酒場の求人を見て来ました。」
うなはバッと立ち上がり、
「これは失礼、ど~ぞど~ぞ。」
と別室へと招き入れた。
改めて面接が始まった。
履歴書を見ながら相手のこともチラチラと見る、どっしりとイスに腰掛けた立派な体格のオーガであった。剛毛は後ろに束ねられている。
「え~、お名前はガンドフ・ロドリゲスさんですね。この経歴はすごいですね、戦士やパラディンを経験した後僧侶も習得、ドルワームで賢者を経て博士号ですか・・・。」
なんでこんなすごい経歴の持ち主がこんな寂れた診療所の門を叩いたのか、うなはいぶかしんだ。
ガンドフと名乗るオーガは時折その体格に似つかわしくなくもじもじとしながらこちらの様子を伺っていた。
「ここで働こうと思った動機は何でしょう?」
そんなおかしな様子の彼を見つつうなは尋ねた。
彼はもじもじと上目づかいで口をモゴモゴと開く。
「あ・・・あの・・あ、あた、あ・・・!」
彼は中々切り出せないのかしばらくもごもご言っていたがやがて意を決したように叫んだ。
「アタシっ!ここならうまくやっていけるんじゃないかと思ってえぇぇ~~~!」
その勢いにうなはイスからずり落ちた、そして彼の様子ですべてを悟った。
ああ、なるほどこの人は・・・・。
彼(彼女?)は切々と語った。
筋骨隆々に生まれたオーガではあったが、内面はオトメ☆それでも何とか男らしくありたいと様々な「男らしい職業」を転々とするもやっぱりダメ、トドメは自身が同性に惹かれてしまうということ、そんな男らしい現場に居続けるのが辛くなって後衛職に転職、心穏やかに過ごすためにも女性が多い職場かあまり人のいなさそうな職場を探してここにたどり着いたという話であった。
人がいなさそうという理由で選ばれたところに関していえば複雑な気持ちのうなではあったが。
(まぁ性別は問わずって書いたしな・・・)
彼(彼女?)の内面はともかく経歴は優秀で基本真面目そうなので採用してみようかなと思った。事務処理とかなら問題ないだろう。
「じゃあガンドフさん、しばらくうちで働いてみますか?」
彼(彼女?)はパァァっと顔を輝かせ、
「こんなアタシでも受け入れてくださるんですねっ!」
いきなりその豪腕に抱きすくめられた。
「げっげふ!」
あら、失礼と床に下ろされる。
うなはごほごほ言いながら、
「それではガンドフさん、明日からですねぇ・・・。」
言う前に彼女は制止した。
「あらやだ、センセ。そんな無骨な名前。アタシのこと今日から『カズコ』って呼んでね♪」
うなは引きつりながら、
「ではカズコさん明日からよろしく・・・。」
こうして診療所には新たな助手、『カズコ』が加わった。
現在、ドワーフ院長1 オネェオーガ助手1
(続く)