最近のうな院長の朝は豪勢な朝食から始まる。
新鮮卵とおいしいミルクをふんだんに使ったふぁふぁの愛情オムレツは焼きたてで、瑞々しいガーディアンサラダはテーブルクロスを彩る。
いやしのスープの香りが食欲をそそりつけ合わせのスマッシュポテトにミラクルサンド、デザードにはちょっと大人の味ダークタルトで締めくくる。
・・・あの無骨な指先がこんな繊細な味を生み出すなんて・・・。
毎回カズコの料理の腕前に感心しながらうなはいやしのスープをすすった。
料理を買って出たのはカズコの方だった、最近流行の料理にハマってしまったのだという。
「もう毎日料理するのが楽しくってぇ~♪やっぱり食べてくれる人がいるっていいですよねぇ。」
うふっ♪という表情を浮かべながらカズコはホクホクと料理を運んでくる。
カズコがちゃんとした女性ならきっといい奥さんになったに違いない。
天は二物を与えないと言うけれど・・・神様はホント残酷よねぇ。
ここ数日、カズコを見ていてうなは思った。
カズコは優秀だ、テキパキと仕事をこなすし家事も主婦顔負け、おまけによく気がつく。一部の問題を除いては・・・。
問題というのはカズコの好みの男性患者が訪れた時のことである、そんな患者が来るとカズコはアツい眼差しで見つめたり、バチコンとウインクを投げかけてみたり。それが普通の女性だったら男性にしてみれば大変喜ばしい行為であるのかも知れないがなにせあの『カズコ』である。
あんな見た目豪傑なオガ男にそんなことされれば大抵の男性は引く。
男性患者から 気持ちが悪い と苦情を受けていた。もちろんカズコを配慮して本人には伏せてある。
うなはカズコに淹れてもらったコーヒーをすすりながらちょっとしたことが気になっていた。
言おうかどうしようか迷ったがやっぱり本人に伝えることにした。
「ねぇ、カズコさん。」
カズコはクルっとこちらを向き、
「はぁい?センセ。」
と満面の笑みを浮かべた。
「・・・お髭、剃り残してるよ・・・。」
その瞬間カズコはお盆を取り落とし、カミナリに打たれたように立ち尽くしたあと、オーマイゴット!!!! と叫んで洗面所の方へとダッシュしていった。
そんなカズコを見送ったあと、うなはため息をついて今後のことを考えた。
やはり少し綺麗どころを雇った方がよさそうだ・・・。
実はカズコには言ってないが新たに受付の求人を出しておいた。
項目欄には小さくさりげな~く『容姿端麗』と書いて・・・。
「まぁ、来るかどうかはわかんないけどね・・・。」
独り言のようにつぶやいた。
洗面所ではカズコのうなり声がまだ響いていた。
(続く)