じーちゃんは認知が進んでから私のことをお母さんと呼ぶようになった
たぶん私の名前は忘れてしまったのだろう
家で一番名前を呼ばれてないからね(お母さんとかママとかなんで)
なにかあると おかーさん! おかーさん! と呼ぶ
私は ハイハイ、なんですか? と様子を見に行く
私が一番そばにいるせいでマンネリなのかトンチンカンな行動が多くなる
夫が休みの時は少し相手をしてもらって違う刺激を与えると少し落ち着いた
少しでも生活に刺激を与えたほうがいいだろうと寝たきりでもできるリハビリ専門を頼むことにした
じーちゃんは寝たきりだけど結構力は強い
ベットから落ちないようにテレビのリモコンを紐でくくりつけていたがじーちゃんはそれを引きちぎっていた
時折、虚空を掴む動作をするのでためしに野球ボールくらいの大きさのスライムのヌイグルミを持たせてみたらそれをしばらくにぎりしめていた
日に日にじーちゃんはじーちゃんでなくなっていく
でもたまに戻ってくるときもある
違う世界に冒険にいって返たまに帰ってくる、そんな感じだ
じーちゃんが比較的元気なうちにじーちゃんに会いたがっていた親戚に会わせる
親戚と昔話に花が咲く
じーちゃんはたのしそうだった
私の体もじーちゃんの親戚達は気を使ってくれた
私が体調を崩したら家がすぐ回らなくなってしまう
親戚達はまた近いうちに会いにくるとじーちゃんに約束して帰っていった
じーちゃんの新たな励みになる
じーちゃんが入院中私はじーちゃんと約束していた
退院したらクリスマスには大きなケーキを食べようと
じーちゃんは そうだな~、食べるか と言っていた
でも、その約束を果たされることはなかった
親戚と再会してしばらくしてじーちゃんの容態が急変した
その日の朝は薬を飲むのを嫌がったじーちゃん
でもよくあることなので最初は特に気にしていなかった
しかし、子供と夫を送り出したあとじーちゃんの様子は一気におかしくなった
体もブルブルと痙攣し、呂律もまわっていない
私はすぐ電話で担当医につないでもらった
担当医は、これで入院したらもう家には帰れないと私に告げた
私は迷った
様子を見ると言ってもこの日は金曜日
これを逃すと土日は先生がいないことになる
その間にこれ以上なにかあっても対応できない
でもこのまま病院にいったら二度と家に帰ることはできない・・・・
もう一人では判断できなかった
一度夫に連絡をとって話し合った結果じーちゃんを病院に連れて行くことになった
私は先生に病院に連れて行くことを伝えて救急車を呼んだ
一刻を争うため悠長に介護タクシーは待っていられなかった
じーちゃんと一緒に救急車に乗り込み病院に向かった