救急車で病院に向かうとすでに担当医は待機してくれていた
じーちゃんは尿毒素が体にまわっているという
担当医には数ヶ月でも家に帰れたのだから本人にとってはよかったのではないかと言った
再び入院してからのじーちゃんはもう食べることも飲むこともできなくなった
腹膜透析の水分と糖だけで体を維持している
カウントダウンがはじまる
看護師さんは病院にくればいつでも会わせてくれると言った
面会の緩和の意味するところは・・・・そういうことなんだろう
じーちゃんは会うたびに干からびていった
生きながらミイラになるのはこんな感じなのか
声をかければかろうじてうなずくが目は開けられないようだった
家にいる時に電話がかかってくるとビクビクするようになる
いつ訃報が知らされるかわからない
固定電話にはかかってこない
私のスマホに直接かけてくれるように頼んでいるから
それでも着信音が鳴る度に反応してしまう
なんだか眠りが浅くなった気がする
入院して3週間くらいがたった頃、私のスマホに病院から電話があった
じーちゃんの容態が急変したのですぐ病院に駆けつける
朝の透析は問題なかったが昼の透析で茶色く濁った排液が出たという
見せてもらったがいつもなら透明な黄色みかかった排液がドス黒かった
看護師からじーちゃんの容態を聞いたあと尋ねる
もう危篤段階ということですか?
看護師はそうだと答えたので私は勤務中の夫に連絡した
2時間後に夫が病院に来るということなのでその間私が一人でじーちゃんに寄り添う
じーちゃんの冷たい手をにぎって呼びかける
じーちゃんは声を発することはなかったが手を握り返してきた
思っていたよりも力強い
薄目が開いているが焦点はあっていない
時折視線がぶつかる気もするが私を認識しているかはわからない
じーちゃんは両手を私の方に伸ばす動作を時々するがベットと機材で阻まれてそれはかなわない
私はひたすらじーちゃんの手を握りさすってやるだけだった
看護師から子供も会わせていいと言われた
本来この病院は子供連れは禁止なのだがおそらくこれが今生の別れになることを示唆している
私は一度帰宅し子供を連れて行った
子供と再度病院に来たときには夫もすでに病院に到着していた
道中、親戚にも連絡したからこちらに向かっているという
じーちゃんの一族は結束が固いのでつく頃には夜になるがそれでも来てくれる
病室には全員は入れないので1時間くらい子供に面会させたあと子供を連れて家に帰った
私も最後までいたかったが子供を付き合わせることはできない
その夜、じーちゃんは未知のフィールドへ旅立った