カズィの冒険日誌

今…私に必要な事はレベル上げだ

そう思い立ち、経験値稼ぎの為にダークトロルを狩る事にした

今まで数々の死線を乗り越え、元気玉がつきた今…

迷いながらもプレゼントの呪文で手に入れた超元気玉に手を出した

一人で使うのはもったいない…しかし一緒にレベル上げをするフレもいない…

これが…復帰勢と現役勢のレベル格差社会…

フッと風の谷のナウシカの言葉を思い出した…

トルメキア軍がオームの群れに対して、まだ熟していない巨神兵を使った時のクシャナ殿下のお言葉を…

”今使わずにしていつ使うのだ！”

（そうだ！超元気がなんだ…ソロが何だって言うんだ）

”所詮…血塗られた道だ…”

無意味にクシャナ殿下の言葉を呟く…



私は葛藤の末…超元気玉を天に向かって掲げた


狩り始めようと思った矢先…


１匹のダークトロルが、崖の上で月を眺めているのが目に入った

月が…綺麗ですね…

私はそっと後ろから話しかけた…

いや…マズイ…月が綺麗ですね…という言葉は夏目漱石流だとI　love　you　なのである…

（ダークトロルにコクってどうする…）

だが…ダークトロルは無言のまま月を眺めていた



どういう心境なのだろうか…

私はダークトロルの立場になって考えてみた…

確かに”彼ら”は経験値的に人気な存在で２４時間年中無休で働いている…

まさにブラック企業の社員なのである

リアルだったら鬱になるか…いつ過労死してもおかしくない状況なのだ

そこに”冒険者”なる者どもが襲い掛かってくる…自分達の経験値の為だけに…

”彼ら”はただ…そこに立っているだけなのに…襲われる日々が続く…


私は…少し可哀そうに思い…ドルボードに乗ったままダークトロルの横に立ち一緒に月を眺めた…

（ゲームの世界だけど…月は…やっぱり綺麗だな…）



っとその瞬間…ダークトロルはこちらに振り向きエンカウントしてしまった

（きっと…もう少し月を眺めていたかったんだろうな）


不憫に思った私は…無抵抗のまま全滅した…