そろそろ語っても
いいかと思ったんだ
俺には決して
楽しくない記憶
しかし忘れがたい
想い出
ある道化の物語を……
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「歌と恋の物語」
俺とアイツが
初めて出逢ったのは
ある女にまつわる一件
くだらない恋の物語
:
だが……
アイツはそれを
真っ向から
否定しやがった
最初から最低だった
そんな恋と歌の物語
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ん、なんて言ったかって?
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「恋と歌の物語~道化編」
ふうん、
君の声は、悪くないね
だが歌詞が最低だ
甘ったるい理想や恋
:
恋人兼パトロンに
媚びるよりも
もっとたらしこむべき
相手がいるんじゃない
例えば世界だとか
そして、この僕だとか
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まったく、最低だろ?
そして女はこう言った
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「恋と歌の物語~歌姫編」
そっちこそ
誰にも理解されない
道化のくせに……
私と結婚するですって
寝言は寝て言いなさい
ただ……
そうね……
私が歌いたいのは
こんな歌じゃなく
世界をひれ伏させる歌
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こうしてめでたく俺は
フラれたってわけさ
かといって、歌姫は
道化のもとにいったわけでもなく
ただ、俺たちは
奇妙な関係を続けた
アイツは
しがないコメディアン
だが僕のせいじゃない
時代が
追いついていないだけ
……が、口癖だった
本当に、
どうしようもないヤツだった
けどな……。
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「僕の物語」
ほう、僕が倒れたのは
治せない病のせい?
それで、どれくらい
この体は保つんだい?
:
まあいい、
ショーを続けよう
いいかい、人生は
死ぬまでが舞台の上
僕は笑いに
生きると決めた
ならば、笑いの内に
死のうじゃないか
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と、いうわけだ。
そして、こうなった
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「歌姫の物語」
そしてまた敵を作って
馬鹿だなあって
私、笑っていたのに
……死んじゃったの?
:
……ああ、でも
そういうこと……
いいわ、私は生きる
歌と共に歩んでいく
ただ、
結婚はし損ねたわね
まったく……
最期まで、道化よね
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……そして、これが
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「俺達の物語」
おい……そうか……
お前は……死ぬのか
結局、時代を
置き去りにして
逝ってしまうのか?
なあ、おい
:
最期くらいいいだろう
なあ、道化さん
俺だって
お前と肩を並べても
ああ、サヨナラだぜ
まったくさ……
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その後のことなんて
語りたくもない
アイツは死に、
女は一人、取り残された
でもたくましく生きていったよ
歌姫には、歌があった
自分の心を歌にする力を
アイツは歌姫に残したから
一方で、俺は……
天才じゃないコメディアンとして
生きた
だからこそ、
大衆に受け入れられて
こんな富と
名声を手にして
でも本当に欲しいものは
得られず
生きた……
これがもう一つの道化
「俺の物語」、さ
笑えるだろ?
まったくさ
:
そうさ、僕はひどいやつ
知っているが直せなかった
だからこれだけは……
伝えたい……
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「あるもう一つの道化の物語」
君がもし信じるなら
ある道化の話をしよう
人々に笑われ破滅して
失意の内に亡くなった
愚かな道化の話だよ
可哀想だと思うかい?
:
僕は精一杯生きて
素敵な人達に愛された
僕が駆けた人生は
そんなに悪くなかった
君がもし信じるなら
道化の話を伝えてくれ
僕が今でも月から
君たちを見ていること
微笑みと共に愛してる
バカだね。まったくさ
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ありがとう。
君たちも、大切な人を
忘れずにね……。
サヨナラ、これにて終演です
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produced by ヨカゼ
※なお、全曲、全セリフはブログに掲載しております。
※ブログについてはフリコメ参照。