カーテンの隙間から差し込む朝日が、古びたワンルームの床を照らしている。佐藤圭介は、その光をぼんやりと眺めながら、ベッドの上で動かずにいた。
何も感じない。何もしたくない。
気づけば、こうして何時間も天井を見つめることが日常になっていた。会社を辞めて半年。最初は「少し休むだけ」と思っていたが、日が経つごとに外に出る気力は失われ、気づけば人との連絡も絶った。
「変わらなきゃ」
何度もそう思った。しかし、体は動かない。心の中には、重い闇が広がるばかりだった。
かつては違った。仕事に打ち込み、仲間と笑い合い、未来に期待していた。しかし、過労と人間関係のストレスに押しつぶされ、ある日突然、何もかもがどうでもよくなった。
それでも、光を求めようとした。自己啓発書を読んだり、運動を試みたり、SNSで成功者の言葉を追いかけたり……だが、どれも空虚だった。
「頑張れば変われる」
そんな言葉は、もはや嘘にしか思えなかった。
携帯が震えた。画面には、かつての同僚・田中の名前が表示されている。
出るべきか。無視するべきか。
指が迷い、結局、通話ボタンを押すことはできなかった。
光を掴もうとするたびに、闇がそれを押し戻す。
圭介はゆっくりと目を閉じた。
――もう少しだけ、この闇の中にいよう。