奈美は気がつくと、薄暗いトンネルの中に立っていた。どこかで見たような気もするが、思い出せない。振り返ると、闇が広がるだけ。前方にはぼんやりと光が見える。出口だろうか。
奈美は歩き始めた。しかし、進んでも進んでも光は遠ざかるばかりで、一向に近づく気配がない。むしろ、自分が後退しているような錯覚さえ覚えた。足は重くなり、次第に倦怠感が襲ってくる。
やがて彼女は力尽き、トンネルの冷たい地面に座り込んだ。そしていつしか眠りに落ちた。
──夢を見た。
それは懐かしい友人たちとの思い出だった。高校時代の夏祭り、大学の卒業旅行、親友と交わしたたわいもない会話。温かな笑顔、心地よい笑い声が奈美を包み込む。幸せだったあの頃が、まるで昨日のことのように鮮明に蘇る。
しかし、ふと目が覚めると、そこには闇しかなかった。光は消え、トンネルは果てしなく続いている。恐怖と絶望が奈美の心を締めつけた。
──歩いても出口には辿り着けない。
ならば、進む意味はあるのか?
奈美は再び地面に横たわり、目を閉じた。また夢を見たかった。楽しかったあの頃に戻りたかった。
そうして、彼女は眠り続けた。
──永遠に。